2019年7月~12月の映画
☆の数は5つが満点 ・「主戦場」 ミキ・デザキ監督 ☆☆☆☆ ・「旅の終わり、世界のはじまり」 黒沢清監督、前田敦子 ☆☆☆ ・「新聞記者」 藤井直人監督 シム・ウンギョン 松坂桃李 ☆☆☆☆ ・「存在のない子供たち」(レバノン) ナディーン・ラバキー監督 ☆☆☆☆☆ ・「メランコリック」 田中征爾監督 ☆☆☆ ・「ガーンジー島の秘密の読書会」 マイク・ニューウェル監督、リリー・ジェームズ ☆☆☆☆ ・「ロケットマン」 デクスター・フレッチャー監督 クロン・エシュトン ☆☆ ・「記憶にございません」 三谷幸喜監督 中井貴一 ☆☆☆ ・「真実」 是枝裕和監督 カトリーヌ・ドヌーブ ☆☆☆ ・「ひとよ」 白石和彌監督 佐藤健 ☆☆☆☆
・「主戦場」 ~ 慰安婦問題を正面から扱ったドキュメンタリー。双方の主張をテンポよく展開させ観る人を引き込む。やや偏りはあるが、一定の核心を突いた問題提起ともいえる。この種の映画でイメージフォーラムの客席が満席なのに驚く。 ・「旅の終わり、世界のはじまり」 ~ 一度訪れたことのあるサマルカンドが舞台と聞いて足を運んだが期待外れに終わった。映像もイマイチ。ストーリーも無駄が多い。 ・「新聞記者」 ~ 経験上、内調はここで描かれているほど強い組織ではないし、BC兵器製造施設建設計画など誇大な空想はあるものの、権力と組織、メディアの関係の問題点を突いていると感じる。メディアが萎縮していることが日本社会の大問題。 ・「存在のない子供たち」 ~ 間違いなく秀作。強い印象も残す。レバノン、ベイルートで暮らすシリア人たち。不法就労で戸籍もない。同じ貧困でも日本のそれとは度合いが違う。育てられないのに産むな、という子供の告発。主役の子役の演技が天才的。 ・「メランコリック」 ~ 製作者チームが若くて、長いものに巻かれず、チャレンジングであることに拍手を送りたい。ストーリーは面白いが、評価は分かれそうな作品。 ・「ガーンジー等の秘密の読書会」 ~ 美しく優しい物語。ロンドンの美人作家がガーンジー島で養豚農家を営む男性の心の美しさに魅かれ結婚するハッピーエンド。ほほえましく心を打つ。あったかい気持ちになりたいとき観るべき映画。 ・「ロケットマン」 ~ 英国ロックスター、エルトン・ジョン物語。ミュージカル風仕立て。彼のゲイ生活、ドラッグ依存などあるがままに描いているのだろう。狂気なスターにありがちだが、共感できない。 ・「記憶にございません」 ~ 安心して笑える。疲れている時も楽しめる。中井貴一が面白くもカッコいい。草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、吉田羊らがそれぞれに魅力的。「デーブ」(1993年米)のように官邸をしっかり見せるともっとリアルになるだろう。また、「スミス都へ行く」(1939年米)のようなメッセージがないことが物足りなさの理由か。日本でも一皮むけた本物の政治ものを観てみたい。 ・「真実」 ~ これだけの世界的キャストを揃えられる日本人監督が出てきたことがうれしい。後半は仕掛けが巧妙で引きつけられたが、前半は疲れもあってかウトウト。全体としては期待外れ。 ・「ひとよ」(一夜) ~ 3人の子供たちを虐待する夫をとうとう殺めてしまった妻。その妻を母に持ちながら育ったことへの葛藤や理不尽ともいうべき複雑な心情をよく描き出している。言葉にできないような不条理は3.11東日本大震災で感じたが、その時に感じた気持ちに類似しているような気がする。次男役の佐藤健、母親役の田中裕子がいい。ときに単純だがとても複雑で深遠な人間というものへの作り手のいとおしさが垣間見える。「ひとよ」は「一夜」と「人よ」両方だと思う。重厚でいい作品。 |
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