外務委員会(平成26年3月12日 議事録)
○玄葉委員 おはようございます。
本日は、三十五分という時間の中で、一つはTPP交渉につきまして、そしてもう一つは、首相の昨年末の靖国神社参拝、あるいは岸田外相御自身の靖国神社の参拝に対する考え方についてお尋ねをしたいというふうに思います。
まず、TPP交渉については、何点か確認をしておきたい、こういう趣旨でございますけれども、妥結の前に確認をしたいことが幾つかございます。一つは、交渉の現状に対する評価、そして見通しについてまずお伺いをしたいと思いますが、そのときに、せっかくなので、例えば全体のスケジュール感、手続なども御説明いただければと思うんです。例えば、最短で四月に大筋の合意を見たらば署名は秋ぐらいになるとか、各国の、例えば法制局の審査なんかがどのくらいかかるとか、そういうこともせっかくなので御説明いただけますか。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
二月の二十二日から二十五日までシンガポールで行われましたTPPの閣僚会合、いわゆるルールの分野につきましては、これまで難しい課題が残されていたというものを含めまして、多くの進展があったと認識してございます。交渉現場にいる人間の感覚としては、大きな山を越えてゴールが見えてきたなという感じをしております。
また、いわゆる市場アクセスと言われる分野につきましても、物品の市場アクセスだけではなくて、サービス、投資、政府調達、一時的入国など、全般にわたって全体会合でも議論が行われましたし、精力的に二国間の交渉が行われまして、実質的な協議が進められたということでございます。
十二月と今回の二回にわたりまして閣僚が集まって熱心に議論をしたということを通じまして、やはり二十一世紀型の新しい経済連携協定をつくるんだという共通の機運と信頼関係が醸成されたというふうに感じております。
我が国の報道を見ますと、次回閣僚会議の日程も決められず、長期化するのではないかというような、そういう報道ぶりでございますが、実際は、甘利大臣を初めとして多くの閣僚の御意見によりまして、次回の閣僚会議の日程をあえて決めず、今回の会議で出された方向性を踏まえまして、今後、分科会でありますとか、あるいは首席交渉官レベルでの詰めを行いまして、また、市場アクセスなどは必要に応じ二国間の交渉を精力的に行うということで、早期の妥結に向けて努力するということが確認されております。
最終局面を迎えているわけでございますが、あえて閣僚会議などの日程を決めなかったということで、今後のスケジュールについては確たる申し合わせ等はございません。ただ、宿題が明確でございますので、今もまさに日米で、ワシントンDCで、私どもの担当者が参りまして、日米の物品の実務者の協議を行っているところでございます。また、各国も精力的にお互いの国を行き来してやっている、そういう話は聞いておりますので、なるべく詰めを行いまして、各分野の詰めがかなり見えてきたところで首席交渉官会合が開催される。そこでどこまで詰められるかの確認をした上で、閣僚会議をやるのか、それとも首席レベルで終わりにするのかということも含めて、それは今後、状況の中で判断されていくものと考えております。
最終的にそういうレベルで内容について実質的に妥結ということがなされた後、御質問でございました、協定が成文を得る、いわゆる署名までどのぐらいかかるかということでございます。
物によってかなり違います。物によってかなり違いますが、例えばウルグアイ・ラウンドの例で申しますと、妥結をしてから署名まで四カ月を要しております。ただ、このときは、かなり各国ともスピードアップして、リーガルスクラビングという法的なチェックの作業を相当迅速に行ったということでございますが、この手の大きなもので最も速い例ということでは、ウルグアイ・ラウンドの四カ月というのが実例としてあるということでございます。
○玄葉委員 交渉姿勢についてもお尋ねをしたいと思います。
私は、高いレベルの経済連携というのは必要だという立場であります。ただ、当然ながら、農業との両立を含めて、最大限の国益を実現しなければならない、こういう立場であります。同時に、野党第一党として厳しい姿勢で政府に対してチェックをすることこそ、むしろ日本国のTPP交渉を応援することになるというふうにも思っておりますので、改めてお聞きをしたいというふうに思っております。
まず、自民党の衆議院そして参議院の選挙での公約、及び衆参の農林水産委員会の決議、これらと現在の政府の交渉姿勢との関連についてどのように考えればよいでしょうか。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
TPPの交渉におきましては、国益と国益がぶつかり合い、大変厳しい交渉が続けられているわけでございますが、国会で何度も答弁をさせていただいているとおり、衆参の農林水産委員会の決議をしっかりと受けとめて全力で交渉に当たるというのが政府の方針でございまして、これは全く変わっておらないところでございます。
また、自民党の公約との関係でいいますと、安倍総理大臣が国会で、「我々が選挙でお示しした公約はたがえてはならないと考えております。」と答弁されているところでございます。
○玄葉委員 そうすると、まず、自民党の選挙公約には、「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める」、こういうふうに書いてございますけれども、この守るべきものとは一体何か、攻めるべきものとは何か、どうお考えになって交渉姿勢をとっておられるのか、御説明願います。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
何を守り、何を攻めるのかということは交渉の中身そのものでございますので、これまでも国会でつまびらかな御説明は差し控えてきたところでございますけれども、衆参の農水委員会の決議の中で、農産物でありますとか、あるいはそれ以外もさまざまなことについて、こうしたことは守るべきだというような趣旨のことが書かれてございます。こうした決議の中身を十分踏まえた上で交渉を行っているところでございます。
また、攻めでございますけれども、例えば市場アクセスのサービスですとか投資ですとか、我が国にとって、アジア太平洋地域においてグローバルなサプライチェーン、バリューチェーンを構築することに非常に意義のあると思われるところについて、各国のサービスや投資分野の市場アクセスの改善等について、私どもとしてはリクエストを行っているところでございます。
○玄葉委員 冒頭申し上げたように、まあ、いずれは妥結をするだろうと、私は若干時間がかかるのではないかというふうに見ておりますけれども、そう思うのですが、その前に、やはり幾つか確認をしなきゃいけないことがある。
それは、一つは言葉の定義なんですね。衆参の決議を読みますと、例えば一番最初にこういう項目が出てきます。「米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とすること。十年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと。」
こういうふうに出ているわけでありますけれども、例えば、この除外という言葉はどう定義するのでありましょうか。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘いただいた決議でございますが、これは衆参の農林水産委員会が決議をしたものでございますので、そこで用いられている言葉の定義を政府としてお答えする立場にはないわけでございますが、あえて一般論で申し上げれば、関税撤廃などの原則に対する例外措置、除外も含めてでありますけれども、その具体的な扱いあるいは定義につきましては、個々のEPAあるいはFTAにおける交渉の中で決められるものというふうに認識してございます。
○玄葉委員 そうすると、今の澁谷さんの話だと、通常のEPA交渉などでは、除外とか例外という言葉の違いというのは、あるいは定義もそうですけれども、明確ではなくて、その時々によって使われ方が違ってくる、そういう側面があるというふうに考えるべきなのではないかということでしょうか。
これは、岸田外務大臣、よろしいですか。
○岸田国務大臣 基本的には今申し上げたとおりですが、今回のTPP交渉における除外等の言葉の定義については、例えばこれは二〇一二年三月に、「TPP協定交渉の分野別状況」というのが政府から発出されております。要は、その時点での、我が国のTPP交渉参加前の情報収集の結果をまとめたものが政府から公表されていますが、その文書を見ますと、例えば除外という言葉については、「関税の撤廃・削減の対象としない「除外」」、そういう記述があります。あるいは、「将来の交渉に先送りする「再協議」」、こういったものを認めない、こういった記述があります。
定義についてはそのときの交渉によって具体化されることになるとは思いますが、例えば定義ということの御質問をいただきましたことにつきましては、こういった文書も存在するということは御紹介させていただきたいと存じます。
○玄葉委員 言葉というのは難しいなと思うんですよ。除外と例外というのは一体どう違うんだろうとまず思いますよね。例えば、これから関税の交渉をしていくときに、除外するというと、まさに、そもそも交渉の対象から外すというイメージがまず一つあり得る、少なくとも持つ人によってはあり得るわけです。
ですから、先ほど、撤廃と削減という話がありましたけれども、要は、除外という言葉は、低関税化するとか、関税を削減するとか、そもそもそういうものの対象にもならないのである、アンタッチャブルなのである、こういうふうに考える人も私はいるのではないかというふうに思いますし、私は、最初、除外という言葉を聞いたときは、そういうことかなというふうに思ったんです。
では、これは、今のお話でいくと、例えば三八・五%の牛肉が、日豪のFTA交渉で、今、下げるという交渉をしている、あるいは、TPP交渉で、この三八・五の牛肉の関税が二〇%台に下がった、あるいは一〇%台に下がった。これは果たしてこの農林水産委員会の決議の趣旨を踏まえたものと言えるのかどうか。これは解釈の問題かもしれませんけれども、いかがですか、極めて現実的だと思うんですけれども。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
交渉の現場で除外というカテゴリーがあるわけではございませんで、例えば、TPPに関しまして昨年二月に日米の共同声明が出されておりますが、その中で、「全ての物品が交渉の対象とされる」と断った上で、「最終的な結果は交渉の中で決まっていくものである」ということで合意されているものでございます。
したがいまして、最初から交渉の対象から全く外すということではなくて、交渉のテーブルに着けた上で、これは甘利大臣も国会で何度も答弁されていますが、いわゆる聖域というものは交渉の中でかち取っていくものである、このように答弁されているところでございます。
○玄葉委員 いや、わかっているんですが、私のときにも、まさにカークさんと話をしていて、物品については交渉の中で決めよう、こういうことを決めたんですね。そのとおりなんだけれども、私が現時点でちょっと確認しておきたいと思ったのは、撤廃と例外、あるいは聖域という言葉ですね。
現実にこれから交渉で出てくるのは、ぐっと関税を下げよう、ゼロまでいかないけれども関税をぐっと下げようという議論というのは出てくると思うんです、私は。そのときに、今の言葉の定義とか、その言葉から受ける印象とかというのは実はとても大事になってくるので、そこの言葉の定義をきちっとしておいた方がよろしいのではないですか、少なくとも、現時点で政府が受けとめている言葉の定義をきちっとしておいた方がよいのではないですか、そういう趣旨です。
○澁谷政府参考人 お答え申し上げます。
全ては交渉の中で決まっていくことでございますので、日本国政府が何か言葉の定義をしているということではないんですけれども、たまたま専門雑誌に、これはおととい発売になった関税に関する専門雑誌で、学者の先生、東京大学の先生が書かれていることによりますと、いわゆる関税撤廃からの除外ということについてはこういうものが含まれるという、これは学者の先生の解釈でございますけれども、一つは、協定上何らの撤廃、引き下げについて約束しないもの、二つ目、関税を引き下げるが撤廃はしないもの、三つ、いわゆる関税割り当て等の措置をするものなどがいわゆる除外に含まれるんだということを、これは学者先生の論文でございますけれども、ここはさまざまな交渉の中で決まっていくものというふうに考えております。
○玄葉委員 きょうのところはわかりました。現時点での受けとめがそうであると。
ただ、おっしゃるように、多分、この言葉の定義というのははっきりしないんでしょうね。除外、例外、聖域、それぞれの言葉の定義がはっきりしないので、恐らく、妥結をしたときにさまざまな問題がこの言葉をめぐって起きてくるのではないかというふうに思います。
最後に二つだけ簡単に注文しておけば、一つは、全体としてやはり情報をもっと出すべきである、国民の皆さんに対して出すべきであるというふうに思います。もう一つは、やはり最初の入場料というか、TPP交渉参加を日米で首脳同士で話し合ったときに支払ってしまった入場料が、本来、日本国として交渉の最大の切り札にすべきカードであったと私は今でも思っています。ですから、そのことが最後になって悪い意味できいてこないといいなということを念じているということだけ申し上げておきたいというふうに思います。
その上で、首相の靖国参拝の方に移りたいと思います。
岸田外務大臣は、昨年末の安倍総理大臣の靖国神社参拝について、どういうふうにお考えになっておられますか。
○岸田国務大臣 まず、安倍総理の靖国参拝に際しての自身の思いにつきましては、既に総理自身が談話という形で発出をしております。その中で、国のリーダーとして、国のためにとうとい命をささげられた方々に尊崇の念を示すということ、そして、不戦の誓いを行う、こういった思いで参拝をした、こういった談話を発出しております。
外務大臣の立場としては、まずはこの総理の真意をしっかり国際社会に伝えていかなければならないということで、この談話につきましては、八つの言語に翻訳をし、百二十の国に談話を送付し、八つの国際機関に対してもこうした談話を送付し、そして現地において説明をする、こういった努力を行いました。
その説明の際に強調すべきことは、やはり、我が国の歴史認識あるいは外交姿勢、これは全く変化がないということであると考えております。我が国としましては、戦後六十九年にわたりまして、一貫して、民主主義あるいは自由、あるいは法の支配、こうした理念を大切にし、平和国家として歩んできましたが、この平和国家としての歩み、これはこれからも全く変化がないということ、こういった点をしっかり説明していかなければならないということで努力をいたしました。
今後とも、国際社会に対する説明については、しっかり続けていきたいと考えています。
○玄葉委員 岸田外務大臣御自身の靖国神社参拝に対する考え方もお尋ねをしたいというふうに思います。
なぜ岸田外務大臣は靖国神社に参拝を、少なくとも外相としてされないのか、その理由についてもお伺いをしたいと思います。
○岸田国務大臣 まず、国のためにとうとい命を犠牲にされた方々に対して尊崇の念を示すということ、これは政治家として大変大切な姿勢であると認識をしております。その思いをどのように表現するのか、どのように具体的に表現するべき対応をするのか、こういったことについては、それぞれの立場において考えていくべきものだと思っています。
私自身は、外務大臣として、安倍内閣の一員として適切に対応していきたいと考えております。
○玄葉委員 適切にという意味は、外務大臣の在任中、行くことはない、こういうことですね。
○岸田国務大臣 政治家として、国のためにとうとい命を犠牲にされた方々に対して尊崇の念をあらわす、このことは私も大事にしていきたいと思っています。そして、具体的な行動については、尊崇の念を示す示し方については、従来から、私自身は、外務大臣として適切に対応させていただく、このようにお答えをさせていただいております。これからもこのようにお答えしたいと考えています。
○玄葉委員 先ほどおっしゃった安倍総理の昨年末の靖国参拝について、参拝それ自体、タイミング、参拝のありよう、そして環境整備、これらについて問題があったというふうにお考えですか。
○岸田国務大臣 安倍総理の靖国参拝につきましては、その後、さまざまな意見や反響が国際社会の中であった、これは事実であると思っています。しかしながら、安倍総理の参拝に対する思い、真意ということにつきましては、自身が談話で表明されているとおりであると考えています。まずは、この真意についてしっかり説明をしていかなければならないと考えています。
その際に、やはり国際社会で、靖国神社そのものに対する認識等、さまざまな理解の度合いがあるというのも現実であります。そもそも靖国神社とはどういう神社なのか、そのことからしっかり説明をしていかなければいけない、こういった場合もあります。
靖国神社には、第二次世界大戦において命を落とされた方々のみならず、第一次世界大戦、あるいは日露戦争、日清戦争、さらには一八五三年以降、明治維新、西南戦争等、国内の騒乱において命を落とされた方々も含めて二百四十七万人の方々が神社に祭られているということ、その二百四十七万人は男女の区別あるいは身分の区別なく祭られているということ、女性も五万人以上の方々が祭られていることなど、こうした靖国神社の実態から丁寧に説明した上で、総理の真意をしっかりと説明していく、こういったことが重要だと考えております。
ぜひ、今後とも、こうした真意とあわせて、我が国の外交姿勢あるいは歴史認識は全く変わりないということ、平和国家としての歩みはこれからも変わらないということをしっかり説明していきたいと考えています。
○玄葉委員 ちなみに、靖国神社は、先ほど明治維新の話がありましたが、あのとき、勝った軍の戦死者は祭られていますけれども、負けた軍の戦死者は祭られていないという事実もまたございますので、参考までに申し上げておきます。
岸田外務大臣は、平成十八年八月二十五日、広島テレビ「テレビ宣言」というものに出演をされて、当時の小泉総理の八月十五日の靖国神社参拝についてどう思うかというふうに聞かれている。そのときの岸田外務大臣のお答えは、「靖国へ参拝すること自体の、国のために命をかけて時代に立ち向かった方に対する敬意を表するという意味では支持します。 しかし、総理大臣が参拝するかどうか、日にちも含めて、参拝の有り様、そして環境整備など、もっと丁寧な配慮が必要だったとは思います。」こういうふうにお答えになっておられます。
安倍総理の靖国神社参拝について、小泉総理のときと同じように、もっと丁寧な配慮が必要だったと思われませんか。
○岸田国務大臣 安倍総理の靖国神社参拝につきましては、先ほど申し上げたとおりに思っております。そして、このことについては、総理自身も国会の答弁等で申し上げさせていただいておりますように、ぜひ謙虚に、そして丁寧に、国際社会にしっかりと説明をしていかなければならない、そういった説明を続けていきたい、このように表明をされています。
ぜひ、外務大臣の立場からも、今後とも謙虚に丁寧に、しっかりと説明をしていきたいと考えています。
○玄葉委員 要は、平成十八年に岸田外務大臣は、当時、小泉総理大臣の靖国参拝について、一定の問題がある、つまり、もっと丁寧な配慮が必要だったと思っておられる、少なくとも当時は思っておられた。これは多分、外務大臣のホームページだと思いますけれども。でも、安倍さんの靖国参拝については問題ないと。小泉さんと安倍さん、どう違うんでしょうか。
○岸田国務大臣 丁寧に説明していかなければならない、しっかりとした配慮もしていかなければいけない、この点においては全く同じだと考えています。ですから、安倍総理も、今後とも謙虚に丁寧に説明していきたい、このように表明されているんだと思っています。
○玄葉委員 小泉さんの場合は、もっと丁寧な配慮が必要だったと思う、そういうふうにはっきり述べておられるので、まさに今、安倍さんに対しても、丁寧な説明がもっともっと必要だというふうに基本的には思っているということだと理解いたします。
また同時に、何か記者会見の質疑を拝見しますと、靖国神社参拝というのは心の問題なのであるというふうにお答えになっているんですけれども、このときは、単に心の問題という一言で片づけられる問題ではないのだ、政治は結果責任だ、こういうふうに出ています。
ですから、そういう意味で、恐らく岸田外務大臣には岸田外務大臣の思いがいろいろおありなのではないかというふうに推測するんです。これは立場上なかなか厳しいかもしれませんけれども、やはり私は、外務大臣として、総理大臣に、ここは意見具申を、その時々においてより積極的にすべきではないかというふうに思うのです。
今回、私がとても気になっているのは、中韓の反発ということもさることながら、結局、例えばアメリカは、同盟国でありながら、失望したという表現を初めて使いました。ロシアも批判の声を上げて、ある識者は、この歴史認識の問題で、米国、中国、韓国、ロシアから包囲網をつくられてしまったということを述べている識者もいます。私は、やや当たっているというふうに言わざるを得ない、残念ながら。
そして、例えばこれから日本国の最大の外交課題である中国と向き合うときに、ポイントは、結局、ルールで決める、同じルールで動こうということを呼びかけていくということに最後は尽きると私は思うんですね。そのルールで動こうというときに、日本だけが中国に対して言ってみても、残念ながら、私の経験上も、全て素直に聞く耳を持つ国ではありません。
そうすると、国際社会をいかに味方につけて、中国に対して同じルールで動こうよということを言うかということだと思うんですね。そのときに、アメリカにそういう発言をされ、しかも、ヨーロッパなどから見たときにも、日本はどうしたんだというふうに見られているのが私は昨今のような気がしますね。
自分の経験で言っても、アメリカよりも、例えばイギリスとかドイツとかフランスは、対中国との向き合い方、あるいは尖閣で起きている事態に対しての発言が、踏み込み不足なんですね、アメリカよりはヨーロッパというのは。何とか一歩踏み込んでもらいたいとすごく思うわけです。
だから、今、国際社会を味方につけなきゃいけない極めて大事な時期だというふうに申し上げても過言ではないと思います。その時期に、何かアメリカとかヨーロッパにどんどん距離を置かれてしまうような行為をするということが、私は、外交上大変な損失になっているというふうに考えざるを得ないと思っていますけれども、いかがお考えですか。
○岸田国務大臣 まず、厳しい外交環境あるいは戦略環境の中で我が国の外交を進めるに当たって、さまざまな国との連携あるいは意思疎通、さらには、ともに汗をかき、ルールをつくっていく、こうしたことの重要性は言うまでもないと考えています。
そして、その中にあって、我が国の外交姿勢に理解を得るために、過去の問題、歴史の問題についても真摯に向き合うということ、これももちろん大事なことであります。歴史の問題につきましても、ぜひ謙虚に、そして丁寧に、我が国の考え方、そして我が国の今日までの取り組みあるいは立場、こういったものも説明していく、これも大事なことであります。
しかし、それとあわせて、それ以上にまた大事なこととして、今がどうであるか、そして未来に向けて日本がどうであるのか、こういったことについてもしっかり理解を得ていかなければなりません。
今日までの我が国の平和国家としての歩み、そして今、日本の国の外交姿勢や歴史認識等が全く変わっていないということ、そして平和国家としての思いもこれからも大事にしようとしているということ、そしてまた、未来に向けて我が国がさまざまなグローバルな課題にどのように積極的に貢献しようとしているのか、こういったこともしっかり説明することによって、トータルで我が国の外交を評価していただく、そのことによって、国際社会において我が国がどんな役割を期待されるのかを考えていただく、こういった姿勢が大事なのではないかと存じます。
歴史の認識につきましても、しっかり説明は丁寧に続けたいと思いますが、ぜひ、現在において我が国がどういう状況にあるのか、そして未来に向けて我が国がどういった思いで臨もうとしているのか、こういったものもあわせてトータルで評価されるべく努力をしていきたいと考えています。
○玄葉委員 アメリカの主要紙が、中国に対する最大のプレゼントであるというふうに報道しました。また、アメリカの外交委員長が、中国を利することになるだろう、こういうふうに発言をしました。
これは私、靖国神社参拝がある前からずっと心配していたことでもあったんですけれども、何かまるで、中国のいわゆる世論戦の土俵の上で戦ってしまっている。こういった問題を日本側から持ち出すことが、中国にとても外交上つけ入るすきを与えているというふうに私は言わざるを得ないというふうに思っていまして、このことを改めて指摘をして、だからこそ外務大臣の役割は、特に日本国の総理に対して影響を与えるという意味での役割が、私は、対ほかの国ということもさることながら、どうもあるぞというふうに思いますので、そういう意味で、私は、外務大臣の奮闘を期待したいというふうに思います。
時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。