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外務委員会(平成26年4月4日 議事録)

○玄葉委員 おはようございます。玄葉光一郎です。
 ICJ、南極における捕鯨訴訟、ショックが走ったというふうに思います。同時に、後ほど今回の厳しい判決を踏まえての反省、教訓をお聞きしたいと思いますが、その前に、けさ、報道あるいはテレビを見ておりましたらば、総理大臣が事務方を厳しく叱責した、こういうふうに報道されていました。
 私は違和感がありますね。叱責というのは、他人の失敗を責め立てることです。これは本当に他人の失敗なのかどうかということだと思うんです。
 これは、私も含めて、これまでかかわってきた、つまりは、この裁判に何らかの形でかかわってきた政治家がまずはきちっと反省するところは反省をするというところから始まらないと、事務方のせいにするという姿勢で、私は、ICJ、非常に重要な役割をこれからますます果たしていく中で、大丈夫かなというふうに思います。
 こういった、事務方を叱責するという、このことに対して私は違和感を感じたわけですが、岸田外務大臣はどのようにお考えですか。

○岸田国務大臣 まず、今回の判決につきましては、我が国としまして、全力を尽くしてみずからの主張を明確に打ち出してきたつもりでありますが、こうした結果になったことにつきましては、まず、この結果につきましては失望しておりますし、そして、こうした結果に至ったこと、まことに残念に思っております。
 そして、この結果を受けて、政府の内部においてさまざまな報告が行われ、そして、それに対して検証し、そして分析が行われているわけです。そのやりとりの一部が報道されたということはあるのかもしれませんが、いずれにしましても、この結果に対しての考え方は、政府全体として表明しなければならないと考えております。
 そして、政府としての考え方、受けとめについては、ただいま申し上げたとおり、失望しておりますし、大変残念であると思っています。
 そして、今後は、関係省庁ともしっかりと連携しながら適切な対応を、具体的な対応を考えていかなければならない、これが政府全体としての考え方であります。

○玄葉委員 これはぜひ一言お答えいただければと思いますが、結局、事務方を叱責したという報道だけなんですね。そして、鶴岡代理人が官邸から出てきたときに答えたコメントも、恐らく総理大臣と打ち合わせをしてお答えになったと私は推測しますけれども、総理大臣から叱責を受けました、ただそれだけです、こういうコメントです。
 私は、違和感があるんです。事務方のせいばかりにしているという、少なくとも、そういう印象を受けます。そのことに対して、いかがですかということです。

○岸田国務大臣 官邸における具体的なやりとりについては、私はその場にもおりませんでしたし、報道で知るのみであります。
 しかし、どういったやりとりが行われたとしましても、こうした結果につきましては、政府全体として受けとめなければならないことでありますし、それに対する考え方、立場は政府として統一して発しなければなりません。
 こうしたやりとりの一部が報じられてはいますが、あくまでも政府一体として責任を受けとめ、そして立場、考え方を発していく、こうしたことは徹底しなければならないと考えています。

○玄葉委員 確認なんですけれども、やはりこれは事務方のせい、そればかりでは決してないということですよね。

○岸田国務大臣 当然のことながら、これはもう政府全体で受けとめ、そして責任を感じ、今後の対応を考えていかなければならない課題だと思っています。

○玄葉委員 私もそう思います。これは私も含めてでありますけれども、やはりショックだったんですね。総理大臣だって、本当に強い関心をお持ちであれば、昨年、口頭弁論が行われた前後にきちっと報告を受けて、さまざまな指示を、特に口頭弁論前にすればよいわけでありますから、当然、政治家の責任でもあるということです。
 何が私はショックだったかというと、この捕鯨の問題そのものもさることながら、ICJ、国際司法裁判所というこれからますます重要性が高まるであろう機関において、日本国政府が初めて当事国になったわけです。原告でも被告でも、いずれにしても、初めて当事国として登場した、その裁判で負けたというのはやはりショックだし、法の支配のチャンピオンを目指したいと思っていると思いますし、私自身はそうあるべきだと思っている者でありますけれども、その裁判で負けたというのがショックだったということなんです。
 したがって、今回のいわば反省、教訓というものを現在分析中ではあろうかと思いますけれども、現時点でどのように今回の経緯から教訓を導き出そうとされておられるか、その点について岸田外務大臣の考え方を聞きたいと思います。

○岸田国務大臣 国際的に法の支配を重視している我が国としまして、今回の判決の結果につきましては、まことに残念に思っています。
 そして、今回の裁判の判決の具体的な内容についてはしっかりと精査しなければならないと思っていますが、今後の国際社会を考えますときに、今後もより一層、国際法に基づく紛争解決の重要性は高まっていると認識をしております。
 そうした認識に基づいて、我が国としましては、特に外務省として、国際法に通じた専門家の育成の重要性を改めて強く認識するところであります。今日までも、こうした国際法の専門家の人材育成、強化に努めてきたところでありますが、今回の経験も踏まえまして、ぜひ、省全体として、我が国の外交における国際法の重要性を再認識し、そして体制の強化を図っていかなければならないと思っています。
 そして、我が国として、こうした人材育成も大切でありますし、また、国の内外を通じまして、専門家同士の人材交流ですとかあるいは連携、こういったものを通じて、より充実した人材と体制整備に努めていかなければならない、こうしたことを強く感じるところであります。

○玄葉委員 今回、例えば鶴岡代理人はTPPの首席交渉官であります。そちらで忙しい身であるにもかかわらず、彼が一番いわばベストな人選だ、少なくとも非常に能力が高いということで、かえずに、彼が口頭弁論をやられたわけです。彼のせいだと言っているわけじゃなくて、つまり、今回、ほぼ現時点で考えられるベストな布陣で臨んだと思うんです。臨んで、結果がこうだったというのがショックだったんですよね、内部を知れば知るほど。
 ですから、これは相当長期戦というか、腰を据えて人材育成をしていく。あるいは、技術的にもいろいろあると思うんです。こういう訴訟に当たって、おっしゃったとおり、例えば、こういう学者さん、こういう外国の専門家を入れた方がいいとか、恐らくそういう技術的なこともたくさんあるんだろうというふうに思いますので、今回のことから導き出す教訓というものを相当しっかりとつくり上げていただきたい、そしてそれを確実にこれからに生かしてもらいたいということを私からも申し上げておきたいというふうに思います。
 次に、ロシアのクリミア編入の問題であります。
 これも、今国際法の話をいたしましたので、きょうはできるだけ国際法の話をしようという思いがあるのでありますが、ロシアのクリミア編入ということに対して、つまりこの行為に対して、我が国としては、国際法上これをどう評価しているのかということについて、事前に通告してございますので、お答えをいただきたいというふうに思います。

○岸田国務大臣 今回のロシアによる一方的なクリミア編入につきましては、既に一連のG7首脳声明等において示しておりますように、我が国は、明らかな国際法違反であると考えております。
 具体的には、三月十二日のG7声明に示されておりますように、一つは国連憲章、そしてさらには欧州安全保障協力会議の最終文書、ヘルシンキ宣言と言われていますが、この文書、さらには一九九七年のロシア・ウクライナ友好協力条約、そして一九九七年のロシア・ウクライナ地位協定、そして一九九四年のブダペスト覚書、こうしたものに対して違反をしていると認識しております。

○玄葉委員 おっしゃるとおりだと思うんですけれども、国連憲章二条四項は、いわゆる強制とか力による領土の取得を禁止しているわけでありまして、そのことに明らかに違反する行為だろうというふうに思います。
 ただ、実はロシアも、これも事前通告しておりますけれども、国際法上の根拠を示して、根拠になっているかどうかは別として、クリミア編入を行った、こう主張しているわけであります。特に、ロシアの立場というのは、プーチン大統領のスピーチ等から幾つか引用いたしますと、クリミア半島の住民の意思表明は、民族自決の原則を定める国連憲章第一条に従って実施をしたのだと。
 民族自決の原則とプーチン大統領は主張するわけでありますけれども、では、このことに対してどのように反論するのですかということが一つあります。
 それと、プーチン大統領は、これも国際法を掲げて、コソボの例を挙げています。つまり、コソボの例を挙げて、独立に係る一方的宣言に際して中央政府のいかなる許可も必要としない、国際司法裁判所、ICJは、国連憲章一条二項、つまりは民族自決の原則だと思いますけれども、一条二項に基づきこれを認めたというふうに言っています。
 さらに、またICJがプーチン大統領の演説で出てくるんですね。コソボ問題に関する二〇一〇年七月二十二日付のICJの勧告的意見ではということで、安保理の実行から一方的独立宣言の一般的禁止を推論することはできない、一般国際法は独立宣言に適用可能な禁止を含まないと定めたのだということまでスピーチの中で実は言っているということです。
 このロシアの主張に対して、どのように日本政府として評価をしておりますか。

○岸田国務大臣 まず、御指摘のように、ロシアは、国連憲章第一条の民族自決権、さらにはコソボの例を援用しながら、みずからのクリミア編入を正当であると主張しているわけです。
 まず、民族自決権とは、主として植民地独立の文脈で掲げられた原則です。ですから、今回のクリミア問題に援用することが適切なのかどうか、我が国としては適切ではないと考えております。
 そして、コソボに関してですが、コソボにつきましては、長年にわたり、国連の安保理を中心として、その地位問題につき、国際的交渉と外交努力が積み重ねられました。そして、一九九四年には国連の暫定統治下に置かれ、その後、国際社会の合意のもとで暫定自治政府が成立し、二〇〇八年二月にコソボは独立を宣言いたしました。こうした独立宣言が行われる過程において、国際法の違反はなかったと認識をしております。
 一方、今回のクリミアの問題に関しましては、その地位において、コソボのときのような国際的な議論は行われておりません。そして、住民投票によって同共和国の分離、編入が過半数をとっても、ロシア軍と見られる武装部隊が展開する中で住民投票が決定、実施されており、その過程において国際法上違法な介入が行われていたと認識をしております。
 こういった点を考慮して、我が国としては、こうしたコソボの事例あるいは国連憲章第一条を根拠として、今回のクリミア併合を正当化することはできないと考えております。

○玄葉委員 特に後者のことはよくわかりました。
 ただ、冒頭おっしゃった、これはぜひ説明していただければと思うのは、多分、今聞いている委員の皆さんも、いわゆる国連憲章一条に書いてある民族自決の原則とロシアは言っていますよね、それに対して、今回は適用されないというのは何でなんですかときっと思っているんじゃないかなというふうに思うので、簡単に説明してもらえればと思います。

○岸田国務大臣 国連憲章第一条、民族自決権が適用されるかどうかということについては判断は難しいかと思いますが、そもそも、この民族自決権、国連憲章第一条、これは植民地独立の文脈で掲げられた原則だと承知しておるので、これをクリミア問題に援用することは適切ではないのではないかというのが我が国の考え方であります。

○玄葉委員 私もそう思います。わかりました。
 それで、今回のクリミア編入問題でありますが、やはり全体の文脈から見ると、私も国際法違反だと思うし、力の論理がまかり通ったな、十九世紀的だな、帝国主義的だなというふうに思います。
 その上で、具体的に幾つか聞きたいのは、今回のクリミア編入がもたらす尖閣における事態、状況への影響をどう考えておられるかということであります。

○岸田国務大臣 まず、クリミアの問題につきましては、アジアを含む国際社会全体にとって極めて重要な問題であると認識をしております。そして、この問題については実際さまざまな議論が行われています。さまざまなところでこの問題の影響について論評がされているのは承知をしております。
 しかしながら、実際のところ、本当にさまざまな要素が絡み合っていますし、その要素が関連することによってどんな結果につながっていくのか、さまざまな議論はあるわけでありますが、我が国の立場として、特に尖閣諸島あるいは北方領土問題等について具体的にどんな影響をもたらすのか、これを予断を持ってお答えするというのは難しいと考えています。
 いずれにしましても、こうした問題が我が国の立場を損ねることがないようにしっかり外交を進めていく、このことが大事だと考えております。

○玄葉委員 実は、この間、在京のロシア大使と夕食を食べました。高村さんも一緒でした。その中で、そういうお酒の場ですから、冗談、ブラックユーモアでありますけれども、先方から、北方領土も住民投票で決めましょう、こういう話がありまして、それは明らかなブラックユーモアだと言ったんですね。
 つまりは、仮に、これから北方領土交渉があって、現在しているわけでありますけれども、国境線が画定しました、日本の領土であるというふうに国境線が画定しました、その中で、ロシア系の住民が住んでいます、そこで、また住民投票が行われて、今回のクリミアのような事態になってしまうということだって全く考えられないわけじゃないわけですよね、今回の事態の援用で、あるいは延長で考えると。
 だから、本当にさまざまなことを、尖閣あるいは北方領土の問題を考える上では、尖閣の問題ということは私は言っていないんですが、北方領土の問題、北方領土交渉を考える上では、あるいは尖閣に対する影響を考える上では、まさに考慮に入れなければならないのだろうというふうに思います。
 そういう意味で、尖閣でありますけれども、やはり中国は息を凝らして現在の状況を見ているのではないだろうかというふうに思うんですね。もし、こういうふうに国際法に反した中で、いわば力の論理がまかり通る形でいわゆる国境線が変わるということに対して、日本を含めて、特に米国初め欧米諸国が何の代償も与えない、何の代償も与えなかったと仮になったときには、やはり中国には誤ったシグナル、サインになるのではないかというふうに思われるのでありますけれども、岸田外務大臣はどのようにお考えですか。

○岸田国務大臣 中国が今回のウクライナの問題についてどう見ているのか、どう考えているのか、私自身、中国の立場について断定的に申し上げる材料は持ち合わせてはおりませんが、先日、国連総会におきまして、ウクライナ問題につきまして決議が採択をされました。その際に、中国は棄権をしたというのは事実であります。
 我が国としましては、こうしたウクライナ問題を通じまして、我が国の立場が損なわれてはならないと考えておりますし、そのために、これまでもさまざまな、G7の共同声明ですとか、あるいは国際会議の場において、力による現状変更は絶対に容認できない、こういった考え方は強く訴えてきたところであります。
 いずれにしましても、国際社会において誤ったメッセージが発せられることがないように、我が国としまして、我が国の立場、考え方、G7初め関係国とも連携しながら、しっかり発出していきたいと考えています。

○玄葉委員 私、ちょっと今思い出したんですけれども、この場でというか、部屋は違ったと思うんですけれども、外務委員会の場でシリアの問題を扱ったことがあって、あのときたしか、オバマ大統領がレッドラインを越えた、一線を越えたということを言った瞬間に、私はまずいんじゃないかなと思ったということを申し上げた記憶があるんです。
 あれは、結果として、レッドラインを越えたといって、軍事介入はしなかったわけです。それは、もしかしたら、識者によっては、誤ったシグナルを与えているのではないか、あるいは今回のプーチン大統領の動きに何らかの形で関係したのではないかというふうにも言われていますよね。
 今回、また何らかの代償、いや、ロシアとの友好関係というのは日本は大事だと私は思っているんですけれども、ただ、何らかの代償がなく形式的な、例えばグルジア戦争のときのような、あれは別に編入したわけじゃない、一方的に、ロシアプラス二、三カ国だけが国家承認しているような状態ということなんでしょうけれども、あの南オセチアとかアブハジアだとか、本当にあのときのような全くの形式的な制裁に終わっちゃって何の代償も伴わなかったという状況が生まれると、これは、これから長い目で見たときに、いろいろなことに影響を与えちゃうんじゃないかと私は心配しているんですよね。
 どう思われますか。

○岸田国務大臣 ウクライナ情勢につきましては、引き続き流動的だと考えております。クリミア情勢ももちろんでありますが、ウクライナ自身、五月の二十五日に大統領選挙が予定をされております。こうした選挙の行方等を見ながら、ロシアを初め国際社会がどう対応するのか、こうした点が注視をされています。
 その中で、我が国として適切に対応していかなければならないわけですが、まずは我が国としましては、三月十八日、ロシアとの査証緩和に関する協議を停止する、さらには、新投資協定、宇宙協定、危険な軍事活動の防止に関する協定、こうした三件の新たな国際約束の締結交渉開始を凍結する、こうした措置を発表いたしました。これは、まずもって、力を背景とする現状変更の試みを決して看過することはできない、こうした姿勢を示す上で適切な措置であったと考えております。
 そして、こうした我が国の考え方は、G7の共同声明あるいは三月二十四日のハーグ宣言、こうしたものに我が国も参加をし、しっかりと表明をしてきております。今後とも、こうした我が国の立場、考え方はしっかり表明していかなければならないと思っていますが、そして、これをロシアに対しても昨年来の二国間関係に基づいてしっかりと直接働きかけていく、こうした姿勢は重要だと考えております。
 ぜひ、こうしたG7を初めとする関係各国と連携しながら、ロシアに対してしっかりと働きかけを行い、そして、今後の情勢を見ながら、さらなる措置についても検討していかなければならないと考えています。

○玄葉委員 オバマ大統領が四月の二十三日から来日をされると聞きました。当然この問題も話し合われるというふうに思います。
 やはり、今のところ日本は、G7の中ではいわば一番後ろで制裁についていっている、こういう感じではないかというふうに思うのであります。
 先ほど申し上げたような北方領土交渉への影響、また、もちろん、後にプラスに出るのではないかという説もあるのはあるのでありますが、尖閣に関して言うと、やはり中国は、下手をすると、南シナ海でも東シナ海でも、こうした力で強く出ても構わないという勘違いをしてしまいかねない、そういう問題だと考えれば、また、さらに言うと、法の支配というものを強く打ち出している日本国として、国際法違反であるというふうに断じている、つまりは、国際秩序をつくる上でのルールの問題、理念の問題として、大事にしている法の支配にかかわる問題だというふうに考えたときに、何となく今のように、G7の中で最後のランナーとしてついていきますよという状況で、事実上の様子見のようなことを続けていてよいのか、こういう批判が当然あり得るわけでありますけれども、いかがでしょうか。

○岸田国務大臣 まず、三月二十四日、オランダ・ハーグでG7の首脳会合が開かれましたが、その際にも、安倍総理は、アジアの厳しい安全保障環境を念頭に、この問題は一地域の問題ではなくして国際社会全体の問題である、こういった発言をしております。ぜひ、こうした問題に対する対応が国際社会に対して誤ったメッセージを発することがないように、しっかり対応しなければならない、こういった思いを訴えたものと承知をしています。
 G7各国、国際法の遵守、法の支配を尊重する、こういった思いについては間違いなく一致をしております。そして、ウクライナの問題について、クリミア編入について強く非難をする、こういった点については一致をしております。
 その中で、我が国として、具体的にどう対応していくのか。我が国独自に対応できる部分もあるのではないかと考えます。
 一つは、昨年来のロシアとの二国間関係に基づいて、しっかりとロシアに対して、この問題について我が国の考え方、立場を訴えるということもあるのだと思いますし、そもそも、ウクライナの情勢そのものに対して、平和的な解決に導くべく、今国際社会が取り組んでいます。IMFを初めとするさまざまな国際機関が協力を今検討しているわけでありますが、こうした国際機関との連携に基づいて、ウクライナの問題を平和裏に解決するべく努力をする、こうした努力に我が国として貢献する、こういった取り組みもあるかと存じます。
 ぜひ、我が国としましては、G7、関係国との連携、これはもちろん大切でありますが、我が国独自の立場からこの問題を平和裏に解決するために貢献をする道もあわせてしっかり検討していきたいと考えています。

○玄葉委員 四月に、岸田外務大臣、ロシアに行かれるという話を以前聞いたことが、報道なんかで見たことがありますけれども、予定どおり行かれるんですか。

○岸田国務大臣 ウクライナの情勢をめぐりましては、先ほど申し上げました、三月二十四日のハーグ宣言の中においても、状況を緩和するための外交的な道筋、これはロシアに対して引き続き開かれているという内容が盛り込まれており、ロシアに対しましてぜひ責任のある行動を促していく、こういった姿勢をG7各国は示しています。
 我が国として、ぜひ、我が国の昨年来積み重ねてきた日ロ関係に基づいて、ロシアに責任ある行動を促していくべく努力をしていかなければならないと考えてはおります。ですから、ロシアとの政治的対話、これはこれからも大事にしていかなければならないと考えています。
 しかしながら、私のロシア訪問、昨年来、ロシアとの間において訪ロが約束されているわけでありますが、この点については、まず、現状においては何ら変更はありません。しかしながら、ウクライナ情勢、そしてG7各国あるいは関係国の動向ですとか、そしてそういった国々との関係等も勘案しながら、引き続きそういった動きを注視しつつ、適切に対応していかなければならない課題だと思っています。

○玄葉委員 そうすると、前向きに行くということよりは、慎重に見きわめる、こういう感じですか。

○岸田国務大臣 ロシアには責任ある行動をしっかり促さなければなりません。また、ウクライナ情勢は流動的であります。こういった中にあって、我が国として適切な行動はどうであるのか、これは引き続き検討していかなければならないと思っています。

○玄葉委員 まさにこれは難しい判断だと思いますけれども、総合的な判断をしていかなきゃいけないんだろうというふうに思います。
 国際法の観点で、また別の問題を一つだけお聞きしたいんですけれども、きょうは国際法にできるだけ特化して聞こうと思っていたんですが、韓国、日韓関係、今度時間があったら一度じっくり全般的にやりたいんですけれども、きょうは、国際法絡みでいうと、幾つかあるんですけれども、一つだけ聞きたいと思います。
 いわゆる徴用工をめぐる裁判というのが、日本企業が敗訴しているわけであります。これは、もちろん個人の請求権においても、一九六五年の日韓請求権・経済協力協定で完全かつ最終的に解決されたのだというのが我々というか日本国政府の立場だというふうに思います。そういう状況の中で、これは判決が確定する可能性が強いという状況になってまいりました。
 中国でもどうやら同じような動きがあって、日本企業がかつて強制連行、炭鉱だとか建設現場だと思うんですけれども、連行して過酷な労働を強いたという問題で、これまでは政治的に中国政府はこの訴えを受理しなかった、中国政府は受理しなかったと言うと正確ではありませんが、ただ、事実上中国政府の影響下にある司法が受理をしなかったということでありますが、最近は受理をし始めたということで、日本企業二十社くらいが訴訟リスクにさらされるという、これは大問題だと思うんです。
 例えば、韓国で判決が確定したとすれば、これは国際法違反として日本国政府としては争うということなのか、それとも、あくまで外交的な解決を求めていくということなのか、その点についてお伺いをしたいと思います。

○岸田国務大臣 御指摘の旧民間人徴用工の問題を含め、日本と韓国の間の財産、請求権の問題につきましては、日韓請求権・経済協力協定により完全かつ最終的に解決済みである、これが我が国の政府の一貫した立場であります。そして、こうした立場は、今までも外交ルートを通じまして、韓国政府のさまざまなレベルに対してしっかりと申し入れを行い、伝えてきております。そして、韓国政府も、本件につきましては、日韓請求権・経済協力協定で解決済みだという立場であると我々は承知をしております。韓国政府自身も、こういった立場については正式に表明をしてきております。
 ですから、本件は、あくまでもこれは韓国政府自身が解決すべき問題であると考えておりまして、我が国としては、韓国政府が早急かつ適切に対応することを求めている、これが今現状の我が国の立場であります。
 我が国としましては、引き続き民間企業とも連絡をとりつつ、日韓間の財産、請求権問題に対する我が国政府の一貫した立場に基づき、適切に対応していきたいと思っております。状況を注視していきたいと考えています。
 その上で、どういったことになるのか、その点につきましては、あらゆる可能性を念頭に適切に対応していきたいと存じますが、現状においては、これは韓国の政府が適切に対応する問題であるということで、まずは状況を注視していきたいと考えています。

○玄葉委員 中国はどうですか。つまり、中国は、恐らく中国政府として、これまでと違って、もっと言うと、韓国政府とも違って、個人の請求権あるいは民間の請求権は、日中共同声明の中で扱ったような形で請求権放棄をいわゆる個人と民間はしていないんだみたいなことを中国政府が言うのではないかというふうに思うんですけれども。

○岸田国務大臣 中国との間の請求権の問題については、日中共同声明発出後、存在をしていないというのが我が国の立場であります。
 そして、今回の訴訟につきましては、こうした訴訟の状況によっては、戦後の日中の経済関係、経済協力、そういったものを揺るがしかねない大変大きな問題であると認識をしております。そうした認識のもとに、引き続き注視をしていきたいと考えています。

○玄葉委員 時間の関係で、最後の質問をいたします。
 お手元に、NPDI広島外相会合の開催に当たっての民主党の議連の提言があるというふうに思います。NPDIというのは、いわゆるNPTの運用会議に向けて現実的な提案をして、今後の国際的な議論を核軍縮・不拡散の分野で主導するためにつくられたものであります。これまで恐らく七回か八回やったと思いますが、私も、当時、三回ほど出席をして、二回議長をいたしました。
 今度、広島で開催をされるということでございまして、それに当たって建設的な提言をまとめて、事前に外務大臣のお手元にもお渡しをしてございます。
 この提言についての評価をお聞かせいただきたいと思います。

○岸田国務大臣 一つ、お答えする前に、先ほどの答弁の中で、コソボに関して答弁した際に、コソボが国連の暫定統治下に置かれた部分につきまして、一九九四年と答弁したようでありますが、実際は一九九九年でございました。ちょっと、おわびをして、訂正をさせていただきます。
 その上で、ただいまの御質問に答えさせていただきますが、今月予定されております第八回NPDI外相会合、初めて被爆地広島で開かれるということで、各国の外相に被爆の実相に触れていただき、その上で政治的な意思をしっかり発信していく貴重な場であると考えております。
 NPDI外相会合、八回目ということですが、その間、玄葉外務大臣も三回御出席されたということであります。今日までのNPDIの実績の上に立ちまして、ぜひ、来年予定されておりますNPT運用検討会議、五年に一遍のこの会議に向けて建設的な提言をしていきたいと考えているところであります。
 そして、民主党の非核議連の提言についてどう考えるのかという御質問でございますが、先日、この提言書、紙を私自身直接いただきました。内容につきまして、大変貴重な提言をいただいたと認識をしております。
 その中で、核軍縮・不拡散に向けたアプローチについてはさまざまな考え方があります。我が国としましては、拡大抑止政策を含む安全保障政策と両立する形で段階的に核軍縮を進めるというアプローチをとっていますが、いただいた提言にあります、核兵器のない世界を目指すという目標については国際社会で広く共有していると考えております。
 そして、いただいた提言にあります、核兵器の非人道性も重要な問題であると認識をしております。核兵器の非人道性を考慮することが、核兵器のない世界を目指す上で、国際社会を結束させる触媒であるべきであると考えます。
 NPDI広島外相会合におきましては、いただいた提言も踏まえまして、ぜひ、核兵器の非人道性をめぐる問題についても、参加する各国外相と率直な意見交換を行っていきたいと考えております。

○玄葉委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ウクライナの危機をめぐって米ロの関係が特に緊迫をしている中でありますので、核軍縮分野でNPDIの果たす役割は大きくなっているというふうに思います。
 大臣の御地元での開催でもあります。私自身のときにたしか広島と場所を決めたんですけれども、あのときに、広島の地元の関係者の皆さんから強い要望をいただきましたし、記録に残しておきたいと思うので一言つけ加えると、特に公明党の斉藤議員から強く広島開催の要望をいただいていたということも申し上げておきたいというふうに思います。
 広島会合の成功を強く期待したいと思います。
 以上で終わります。どうもありがとうございました。
 

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