『第二の男』 小島英記著 (日本経済新聞出版社)
著者は1945年生まれ。日経新聞のパリ特派員、文化部編集委員を経て独立された方で、私の松下政経塾時代の恩師である伝記作家小島直記先生のご長男にあたる。
第二の男、つまり偉大なリーダーのナンバー2、補佐役、盟友、同志、ライバルたちの生き様を書いている。
具体的には、「土方歳三」「藤沢武夫」「リシュリュー」「諸葛亮」「ウォルシンガム」「大久保利通」「チェ・ゲバラ」「ポチョムキン」「豊臣秀長」「タレイラン」「直江兼続」を取り上げる。それぞれ、「近藤勇」「本田宗一郎」「ルイ13世」「劉備」「エリザベス1世」
「西郷隆盛」「フィデル・カストロ」「エカテリーナ2世」「豊臣秀吉」「ナポレオン」「上杉景勝」の「第二の男」たちである。
カオスの世には必ず英雄待望論が起こる。昨今もそうである。しかし、敢えてナンバー2の物語を描くところに、私は著者の
人間性や価値観を垣間見る。
ナンバー1でなければ歴史に残らないと喝破する野心家がいる。私の知人である著名なオーナー経営者は、全ては一人から成るとしてトップを狙う人しか支援し ないという。でも、歴史は一人では絶対に創れない。そこには主役を凌ぐ協力者がいるものだ。多くは、能力がありながらそこに我慢強さが加わるから、主役を 超える「人物」たちともいえる。そういった歴史に埋もれがちな人物たちを描くところに、著者の優しくかつ鋭い眼差しや人間観を感じる。
ナンバー1とナンバー2との間の「間合い」や互いの立ち位置は、相当に繊細で微妙なものである。筆舌に尽くしがたいほどの壮絶かつ複雑な人間ドラマの一端を的確な参考文献を駆使しながら描いてくれていて、「人間学」の勉強になる。
11話ある中で、私としては、土方歳三、諸葛亮、大久保利通が好きだ。
|