総務委員会(平成15年3月25日 議事録)
〇玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。三人の先生方、ありがとうございました。まず、田原さんに、ひとつぜひ御見解をといいますか、どういうふうにごらんになっているかお尋ねをしたいと思うんです。イラク攻撃が始まりました。我々はイラク攻撃を大体、映像を通して見るわけです。率直に言って、映像が戦争の成否を決めるという側面があるのではないかというふうに思います。そして、米国もイラクも、情報操作といいますか、メディア操作に懸命になっているはずだというふうに私は思うわけでありますけれども、これまでの日本のこのイラク攻撃に対する放送メディアの報道のあり方、もちろん、いろいろな番組をどこまでごらんになっているかという問題はあるかもしれませんけれども、特にニュースなんかも含めて、田原さんとしてこれまでの日本の放送メディアのイラク攻撃に対する報道の仕方をどのようにごらんになっているかというのをぜひお尋ねしたいと思います。
〇田原参考人 さっきもありました、最前線を走っている戦車をCNNが中継している。まるでドラマみたいだということを言っている人がある。CNNがこの最前線の戦車を中継しているということは、つまり、米軍が許しているということですよ。だから、ある意味では、CNNが最前線の戦車を中継しているということは、つまり、米軍のいわば戦争広告だというふうに見てもいいと思います。アメリカは、既にイラク戦争について何度もメディアを、しょっちゅう利用していますね。例えば、戦争を四十八時間してやると言って、一時はアメリカのメディアが先に延ばすと言って、先に延ばすとメディアが放送したころは、もう始まっていたわけですね。だから、アメリカは、当然ながら、メディアというものは自分たちの政策に利用するものだと思っている。一つは、日本のメディアは、そこでは、歯がゆいんですけれども、そういうものだととらえないで、そのままの、それがいかにも客観的な事実であるかのように放送しているというのが、これは一つ問題だと思います。それからもう一つは、つまり戦争で今何が行われているかということは、これは本当に真剣そのものの問題ですが、この解説が、いろいろな番組をやっていますが、極めてリアリティーがない。何かバラエティーの解説と同じような調子でやっているのもある。こういうものはやはりテレビ局がもっときちんと自己責任を持たなきゃいけない。そういうことを含めて、さっきの繰り返しですが、私は、どうも日本は、政府も野党もマスコミも、このイラクの戦争を観客席で見ているという感じ、つまり参加していない。ちょっと長くなっていいですか。(玄葉委員「どうぞ」と呼ぶ)だから、例えば、小泉さんがアメリカに支持表明したということは、当然イラクは、アメリカ、イギリスに次ぐ日本を第三の敵というふうに考えるわけで、イラクだけじゃない、それはイスラムの国々から、あるいはどこからか、テロが当然日本にやってくる可能性がある。つまり、そういうアメリカ、イギリスに次ぐ第三の標的になるぞということを小泉さんは支持表明の前に国民に説明したか。だから皆さん、そういうことを覚悟しろ、しかし、これは覚悟せざるを得ないんだと。そこをもっと、自民党もだらしないと私は思うんだけれども、覚悟せざるを得ないんだということをもっと国民にちゃんと言うべきです。そこの点を民主党も追及すべきなのに、民主党が何か、理解しないとかくだらない、あんなことは国民は聞きたくないんです。つまり、民主党もまさに観客席にいる。ここに非常に不満を感じます。
〇玄葉委員 きょうは、報道のあり方、あるいはメディアのあり方ということなので、イラクの議論は少し避けますけれども、ただ……
〇田原参考人 ちょっと一つ、聞いちゃだめなの。でも、聞きますよ。民主党は盛んに、アメリカが単独で攻撃したのは反対と言っている。だから、やはり国連の安保理決議をとるべきだったと言っている。では、安保理決議をとったら日本は何をしようと思っているんですか。そのときはどういう協力をするんですか。
〇玄葉委員 いや、それは基本的に我々は支持をするということに恐らくなったと思いますよ。
〇田原参考人 だから、国連の安保理決議が通ったときには一体日本はどうすべきだとあなたは考えているんですか。それを考えなくて、ただ支持だけというのは無責任じゃないですか。(玄葉委員「支持しないということをですか」と呼ぶ)いや、アメリカが独自に行くのはけしからぬ、こんなものは支持すべきじゃない、それは国連の安保理決議を経てやるべきだと。だから、国連の安保理決議を経た場合には民主党はどうすべきだと思っているんですか。日本はどうしようとあなたは思っているんですか。
〇玄葉委員 現実には法律の枠内で最大限協力すると……
〇遠藤委員長 ちょっと待って。委員と参考人の方々に申し上げますが、理事会の協議において、発言者に対する質問は行わないということを冒頭に申し上げておりますので、お含みおきください。
〇玄葉委員 法律の枠内で最大限協力するということになったと思います、すぐ新法はつくれませんからね。民主党の場合はそういうことになったと思います。ただ、ちょっときょう、少し音先生にも質問したいので……(田原参考人「じゃあ、そのときには新法をつくるわけね。新法をつくって自衛隊が参加するんですね」と呼ぶ)いやいや、そこまでは言っていませんよ。それは先の話ですよ。(田原参考人「あいまいじゃないですか」と呼ぶ)いや、だから、現在の法律の枠内で最大限協力するということに間違いなくなったと思います。
〇遠藤委員長 今はディベートの時間でございませんので、どうぞ、発言の場合は挙手して、許可を得てやってください。 玄葉委員。
〇玄葉委員 それで私、イラクの報道を土曜日、日曜日に地元で少し見ていたんで、実はCSとかなかったんですね。そうすると、情報がすごく限られるんですよ。ですから、音先生にも私お尋ねしたいんですけれども、実情は、日本は多チャンネルになっていないと私は思うんですね。多チャンネルの仕組みはつくったように見えるけれども、残念ながら、実情は多チャンネルになっていないというところがあるんじゃないか。政治の討論番組もいいけれども、我々みずからが、視聴者が判断する材料がたくさん欲しいというのを今回のイラクの問題なんかでも思うんですね。だけれども、実情は何か多チャンネルになっていない。これは放送の産業構造にも問題があるのではないだろうかと思うんですけれども……
〇田原参考人 ちょっと僕が答えた方がいいと思う。
それは単純に、日本がアメリカ情報に頼っているということです。だから、NHKを見たって民放を見たって、全部アメリカ情報なんです。
〇遠藤委員長 音参考人。
〇音参考人 一つは、私の方から質問してはいけないのかもしれませんけれども、今おっしゃっている多チャンネルになっていないというのは、チャンネルの数がなっていないということを、つまり、量をおっしゃっているのか、質のことをおっしゃっているのか、どちらなんでございましょうか。(玄葉委員「量」と呼ぶ)量ということですか。つまり、チャンネルの数が少ないのではないかということですか。チャンネルの数ということでいえば、地上放送でいいますと、民間放送を全国四つにしていくということを一生懸命やってきたわけですし、それからNHKの二チャンネルでありますとか、先ほどお話にありましたCSのお話ですとかということで、チャンネルの数は比較的、海外と比べると多チャンネル化は進んでいるんだと思います。問題はやはり質だというふうに私も思っております。それは、多分先ほどの田原さんのお話と非常に重なるところがあるんだと思いますけれども。これは、大学に籍を置く者ですから、こういうふうなお話をさせていただく方がいいのかもしれませんけれども、放送の質というものをどういうふうに評価するかといったときに、例えば多様性がどのぐらいあるのか、私たちに提供されるサービスというのが、どのぐらい多様性のある情報が入ってきているのか。これは、実はいろいろな研究者がその数量化をしようというふうなことで研究をしております。そのことからすると、日本はどこまで多様性が進んでいるのかというのは非常に問題があるのではないのか。私は、どこまでがアメリカの情報に頼っているのかという数量化をしたものは持っていませんので、アメリカ情報に頼っているというふうにどこまで言えるのかわかりませんが、ただ、少なくとも、今私が実際に、例えばイラクの問題で接する限りにおいて、アメリカ側ではない情報というのはそんなに多くはないのではないのか、例えばアルジャジーラのようなものというのが見える。ただ、このことは、二つだけ追加で申し上げさせていただくと、先週まで私はニューヨークにおりまして、では、アメリカのメディアは今どうなっているかというと、これは私の感想でございますが、もうちょっとひどい状況というふうな気がいたします。私は九・一一のときも実はニューヨークに住んでおったんですが、そのとき以降、相当アメリカは、多様なメディアがある、多様な情報が提供されるというふうに言われていたのにもかかわらず、随分狭くなってきているのではないのかなというのが印象でございました。もちろん戦争の当事国であるということは加味しなくてはいけません。それからもう一点でございますが、テクノロジーの発達ということでいいますと、これは私の知る限りなんですけれども、フォークランド紛争、イギリスとアルゼンチンが戦ったあのフォークランド紛争のときに初めて、戦争報道におきましては、自国の軍隊が攻めているところの相手の国の、つまり、言うなればミサイルが飛んでくる側の映像というものがその攻めている国の国民に届いたということがございました。つまり、イギリスの国民は、フォークランド紛争で初めて弾が飛んでくる側の映像を見たんです。多分、人類の歴史ではそこで初めて出てきたんですね。湾岸戦争のときには、ピーター・アーネット氏がああいうようなことでやりました。今回は、まさに両方からカメラが入っているわけです。つまり、これはテクノロジーの進歩なのでございますね。つまり、これはつい最近のことなんですよ。こういうふうな状況になったのはつい最近のことだということもあります。
〇玄葉委員 確かに、今の、特に地上波なんかは、私は、アメリカの同行記者とかそういうところからの情報の垂れ流しというところが、率直に言ってちょっとあると思います、私も、率直に言って。だからこそ、例えばCS番組なんかがばっとあって、ほとんどの国民が入っていて、いろいろなニュースをそこで見られる、情報がとれるという状況になっていた方がとても健全だと。だけれども、なかなかならない。いろいろなニュースをNHKの衛星なんかは流してくれていますよね。F2だとかZDFだとかアルジャジーラとか、流してくれている。非常に参考になります。だけれども、仮に衛星が入っていなかったら私はかなり偏っていると思いますよ、今の日本の地上波の場合は。ですから、構造的にというか、これは番組の質、ソフトの問題もあるんですけれども、放送の産業構造という観点から考えたときにどうなのかなというふうに思ったものですから、音先生にも尋ねてみたということです。あとは、これは政治もそうかもしれません、最後は選挙民というところがあるのと同じで、最後は視聴者というところもあるのではないかと思います。私も二年ぐらい前に初めて知った言葉でしたけれども、メディアリテラシーというんですか、番組を批判的にというか、主体的にというんですかね、読み解く能力を子供のころから身につけさせようということで、カナダなんかではそういう学習、学習というかトレーニングをさせているということなんですけれども、これは効果的だと思われますか、音先生
〇音参考人 メディアリテラシーというのは非常に重要だというふうに思っております。カナダにつきましては、私もNHKの番組等で御紹介させていただいたこともあるのですけれども、ただ、それが学校教育の中に入っていった場合には、どういうふうな形でカリキュラムの中に組み入れていくのかという点についてはいろいろな議論があるのではないのかなというふうに思います。カナダに関しましては、学校教育の中に非常に早い段階で取り入れましたけれども、当然のことですけれども、ある種の文化政策の側面もあるわけでございます。つまり、隣には非常に大きな、圧倒的なエンターテインメント情報を提供するアメリカという国がございまして、その中でカナダという国の文化政策という側面も、カナダの中におけるメディアリテラシーというのはもちろんございます。つまり、何を言わんとしているのかというと、この人がメディアリテラシーが非常に高まったというのをだれが評価するのか。つまり、それは学校カリキュラムの中では、私も大学で学生にメディアリテラシーの授業をやって評価をするんですけれども、評価することというのはすごく難しいですね。そこの問題がもう一つ片方で出てくるということもございます。
〇玄葉委員 もう一ついいですか。まだ時間ありますか。
〇遠藤委員長 どうぞ、玄葉委員。
〇玄葉委員 先ほど、情報発信の一極集中という話がありましたよね。私も、そういうところはあるだろうなというふうに思いますけれども、ただ、実はますますそういう傾向が強まる基盤というか構造になっているんじゃないかと。キー局とローカル局の関係もそうだけれども、このキー局の力がどんどん強くなっていく傾向をどう是正していったらいいのか、あるいは、それはそれでいいというふうに考えるのか。これは、田原さんもコメントがあればお聞かせいただきたいし、音先生なんかも一言あれば。
〇田原参考人 戦争が始まって、テレビを見ていて、テレビリテラシーの問題です。テレビをごらんになっている人がみんな気がついていると思います。戦争が始まる前はバグダッドに各局の社員がいました。戦争が始まると全部フリーになりました。つまり、各局は、身の安全、自社の社員に対しては安全で、フリーはどうでもいいよという、これが非常に露骨に出てきた。こういうものを一回やはり視聴者がとらえなきゃいけないというのが一つですね、メディアリテラシーの。もう一つ、実は、これは、きょう発売の週刊朝日の表紙を見て僕はびっくりした。イラクへ行く米軍の、要するに群れを撮っているんですよ。ところが、見ましたか、帽子に、ヘルメットに全部マークがついている。鳥居みたいなマークなんですよ。変だなと思って、何だと言ったら、これは守礼門なんです、沖縄の守礼門。つまり、沖縄の軍が行っているんですよ。全部が沖縄じゃなくて、ほかはあるかというと、余計な話になりますが、守礼門のマークをつけたら、これがはやりまして、お守りになるというので、みんなはやっている。まあ余計な話になりますが、守礼門のマークをつけたのがイラクへ行っているんだ。これは日本と関係ないわけがないんですね。こういう問題が一つある。もう一つ、さっきの本筋に答えたいんですけれども、報道は一極集中化する可能性がある、戦争になれば殊にある。だから、そこでいかにこれを、そうじゃなく、一極じゃない報道をとりたい、実はこれは各局が願っているんですよ。各局が願っている。でも、ここは、むしろこれは局の問題もあるんだけれども、やはり安全第一なんですね。社員がもし死んだり事故を起こしたらまた問題になるというので、安全第一になっていって、そうすると、そういうのはどうでもいい、どうでもいいじゃなくて、要するに、突貫小僧がいっぱいいるアメリカがやはり強いんですよね。だから、そこは、必ずしも資本の問題とか何かじゃなくて、どうも我が日本に、これはもう私の、つまり自分の悩みでもあるんだけれども、日本のマスコミに突貫小僧がいなくなった。また、突貫小僧をなくすように、個人情報保護法なんて、あれは全部、突貫小僧縛りの法律なんですよね。八代さん、頑張ってください。