『日本のいちばん長い日』 原田真人監督、山崎努、役所広司、本木雅弘、半藤一利原作。
『ミッション・インポシブル』 トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン。
『野火』 塚本晋也監督、大岡昇平原作。
『天空の蜂』 堤幸彦監督、江口洋介、東野圭吾原作。
『岸辺の旅』 黒沢清監督、深津絵里、浅野忠信、湯本香樹実原作。
昭和20年、8月14日の御前会議の模様を24時間の維新として小説にした半藤一利著『日本のいちばん長い日』では、鈴木貫太郎首相の政治力に力点が置かれている。すなわち鈴木首相を「土性骨の人」とし、「舳だけ冲に向けながら、終戦という港にボロボロの船を漕ぎつけた」(志賀直哉)無私無欲の人として高い評価をしている。原田監督作品の映画ではむしろ阿南陸相の人物像やリーダーシップにフォーカスしている。阿南が「整然たる退却をなしうるものはけだし名将」という言葉を胸に秘めながら、彼にしかできない役割を果たしていく姿を大きなスケールで描いている。陛下(昭和天皇)の描き方も難しかっただろうが、東条元首相と向き合い叱責するシーンなどかなり思い切って表現しているように思う。8.15玉音放送後も一部の軍隊による抗戦は続いた。それぞれがそれぞれなりの日本的忠誠心に従い行動していた時代なのだろう。決定的局面において冷徹かつ合理的に大局的判断を下しそのことを実行する力に欠けていた時代であるからこその敗戦であるが、後始末という本音では誰ひとり引き受けたくない役割を果たした人物たちを高い評価で描いたことに注目したい。
「野火」はフィリピン、レイテ島での日本兵の姿を描く。戦場というものはこれほどまでに酷く狂気なものであることをストレートに表現。強烈な印象残す。
「天空の蜂」は、飽きないがつかみどころがない作品。3.11を実体験している立場からすると切迫感や迫力などに物足らない面を感じる。「もの言わぬ」多数へのメッセージなのか。
「岸辺の旅」は、彼岸と此岸をたゆたうふたりの物語。成仏できない魂なのだろうか。現実にはありえない設定でストーリーは進むが平坦すぎて見せ場がない。こういう視点で人生や夫婦愛を語ることもできるのかとは思う。製作の専門家の立場からすると素晴らしいとの評価も聞くが、再度観たいとは思わない。
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