10~12月の映画
『ハドソン川の奇跡』 クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス 『怒り』 李相日監督、吉田修一原作、渡辺謙 『ジェイソン・ボーン』(米) ポール・グリーングラス監督、マット・デイモン 『何者』 三浦大輔監督、朝日リュウ原作、佐藤健、有村架純、二階堂ふみ 『湯を沸かすほどの熱い愛』 中野量太監督、宮沢りえ 『永い言い訳』 西川美和監督・原作・脚本、本木雅弘 『われらが背きし者』(英) スザンナ・ホワイト監督、ジョン・ル・カレ原作、ユアン・マクレガー 『92歳のパリジェンヌ』(仏) パスカル・プサドュー監督、ノエル・シャトレ原作、サンドリーヌ・ボネール 『この世界の片隅に』 片渕須直監督・脚本、こうの史代原作 『ヒトラーの忘れ物』(独・デンマーク) マーチン・ピータ・サンフリト監督、ローラン・モラー 『アイ・イン・ザ・スカイ(世界一安全な戦場)』(英) ギャビン・フッド監督、ヘレン・ミレン
『ハドソン川の奇跡』 2009年1月15日に起きたUSエアウエイ不時着水事故。乗客・乗員155人が全員無事で“奇跡”といわれ機長は英雄となった。ところが、彼はその後国家運輸安全委員会の厳しい追及を受ける。科学的検証の結果、不時着水というリスクの高い選択より、そもそも空港に引き返せたのではないかという疑惑だ。結局、“人的要素”を加えるべきという本人の主張が採用され犯罪者となることを免れた。人間と機械の判断の差。合理的な機械よりも人間のほうが正しい判断をするという一つのケースである。それにしても米議会の事故に対する容赦のない姿勢に肝が冷える。 『怒り』 渡辺謙、宮崎あおい、松山ケンイチ、森山未来、妻夫木聡、綾野剛ら俳優たちの熱演 ぶりが光る。信じて裏切られる者たちがいれば、信じ切れずに後悔する者たちもいる。人間というものが紙一重の微妙なバランスで危うく脆いところに立っていることを意識 させる。難しいテーマを上手に編んでいる作品。 『何者』 映画に演劇手法を取り入れたりして何かに新しいチャレンジをしていることはわかるが、心には響かず、手応えなし。 『湯を沸かすほどの熱い愛』 強くてあたたかいおかあちゃんを宮沢りえが、優しすぎる娘を杉咲花が好演。 『永い言い訳』 期待が大きかった分物足りず。 『われらが背きし者』 地味だが味わいあり、ストーリーも後味もいい。 『92歳のパリジェンヌ』 ジョスパンフランス元首相の母の人生を、娘のノエル・シャトレの小説を原案に、尊厳死を実行する老婆を描く。ひとつの立派な人生のたたみ方だ。 『この世界の片隅に』 アニメ。クラウドファンディングで資金が集まったといわれる。SNSで話題沸騰の作品。 のんさんの声もあり一定の感情移入をして鑑賞できた。戦争を激しく描くのではなく、 静かに描くとこうなるのかなと感じる。 『ヒトラーの忘れ物』 舞台はデンマーク。敗戦ドイツの少年兵の物語。捕虜となったドイツ人少年兵が危険な地雷除去作業に従事したことをこの作品により初めて知った。憎しみの中に生まれたデンマーク人軍曹との間の親子のような感情に人類未来への希望を感じる。ドイツ人捕虜を扱った、しかも非人道的に扱った映画は珍しいのではないか。価値ある作品。 『アイ・イン・ザ・スカイ』 リアルでしっかりした映画。会議室でドローン映像を見ながら戦争する現代戦争の実態、さまざまな葛藤と矛盾の中で軍人が判断し、最終責任者が決断する過程を生々しく描き出している。秀作。
|
|