2017年7~9月の映画
☆の数は5つが満点 ・「彼女の人生は間違いじゃない」 ☆☆☆☆ 廣木隆一監督、瀧内公美、光石研 ・「スパイダーマン:ホームカミング」 ☆☆ ジョン・ワッツ監督、トム・ホランド ・「Elle」(エル) ☆☆☆ (仏)ポール・バーホーベン監督、イザベル・ユペール ・「関ケ原」 ☆☆☆ 原田真人監督、岡田准一 司馬遼太郎原作
・「彼女の人生は間違いじゃない」 ~ 原発事故も含めた東日本大震災における被災は、言葉にできない理不尽さの塊だ。被災の態様は多様であり一言では言い表せない。津波で肉親を失った方々の中でも、遺体が見つからない場合は、節目がなく、あきらめもつきにくい。原発事故の影響で避難指示が出た地域では初期の捜索ができなかったのでなおさらだ。そんな遺族であり被災者である主人公みゆきとその父。いわきの仮設住宅に住みながら、パチンコ漬けの父親。みゆきは市役所に勤める傍ら週末は東京をバス往復し、なんとデリヘルで働く。無論お金のためではなく心の空白を埋めるためである。廣木監督が郡山市出身ゆえ描けるストーリーだろう。飛躍しすぎではとの感想もあるだろうが、瀧内公美の表情や体当たりの演技を見ながら、そうせざるを得ないほどの喪失感と苦しみなのだろうと受け止めた。3.11から6年を経て、それぞれの被災者がそれぞれのスピードで歩んでいる。前へ進んでいる人もあれば立ち止まったままの人もいる。ラストシーンで、この親子が激しくもがきながらもそろりそろりと一歩を踏み出そうしている場面を描いている。監督の福島への思いを感じる。 ・「スパイダーマン:ホームカミング」 ~ 前2作はテレビで見た程度だからか面白みが伝わってこなかった。 ・「エル」 ~ いかにも「氷の微笑」のバーホーベン監督らしい問題作。10歳の時に父が殺人を犯すという衝撃的な体験をした主人公ミシェル。殺人鬼の娘という事実を背負いながら、いまやゲームソフト会社の社長。出会う男を魅了していく様子は実に堂々としている。倒錯した感情などを上手く表現しているのはさすがイザベル・ユペールという感じ。共感はしないが飽きない作品。 ・「関ケ原」 ~ 怜悧で人情味のない武将として描かれることの多い石田三成。しかしこの原作及び映画は、彼を「義」を貫いた愛すべき武将として登場させ、僕の三成観を少し変えた。戦(いくさ)を「あらゆる細工を施し、思う目を出す博打」と表現する家康には、したたかさや人間力において勝てない三成。「One For All」を言いたかったとパンフレットで語る原田監督。「野」にいる人や大きなチャレンジをしている人を声援しているような感じがする。映像へのこだわりも感じる作品。
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