2023年の鑑賞映画
☆5つが満点 *「ファミリア」 ☆☆ 成島出監督、役所広司、吉沢亮 脚本が悪いのか退屈。俳優がもったいない。 在日外国人問題を掘り下げるでもなく、ハングレの設定も不要。感情移入できず。
*「すずめの戸締り」 ☆☆☆ 新海誠監督 3.11が40代の「通奏低音」になったという新海監督。 「見なければ」との思いで足を運ぶも、鎮魂にも被災者への励ましにもなっていないように思う。 多様な被災者の心の傷を癒してくれるような物語を期待したが、期待しすぎだった。 ラストはいい。
*「エゴイスト」 ☆☆☆ 松永大司監督、高山真原作、鈴木亮平、宮沢水魚、阿川佐和子 LGBTQへのストレートな問題提起。ど真ん中に職級を投げ込んでいる。 俳優陣がしっかり演じているが、必要以上にラブシーンが多い。カメラワークで酔ってしまった。
*「逆転のトライアングル」 ☆☆☆+☆半分 スウェーデン リューベン・オストルンド監督 2022年パルムドール賞受賞作品。 わかりやすい社会風刺で面白いが、少し長すぎる。
*「生きる Living」 ☆☆☆ 英国 オリバー・ハーマナス監督 黒澤監督の「生きる」をカズオ・イシグロ脚本でリメイク。 日本人作品が外国でリメイクされるのは素直にうれしい。 余命宣告で生きる意義に目覚めた主人公を通して生きることの本質を掘り下げる。 1952年の黒澤作品のほうが丹念に作られていてしっくりいく。リメイク版での主人公のあだ名はゾンビ。原版はミイラ。
*「同じ下着を着るふたりの女」 ☆☆☆☆ キム・セイン監督・脚本、イム・ジホ、ヤン・マルボク 「母のことを愛したい。娘のことをうまく愛せない」。現代韓国の母娘関係の一つのリアルを2人の女優とカメラワークがあぶり出している。味わい深い作品。若い女性監督に勢いを感じる。
*「怪物」 ☆☆☆☆☆ 是枝裕和監督、坂元裕二脚本。安藤サクラ、永山瑛太。 カンヌ脚本賞。引き込まれる優れた作品。伏線いっぱいで創りこんでいる。 母、教師、当人たちのそれぞれの視点があり、真実は一つのはずなのにそれぞれの視点からの見え方が違ってくる。羅生門のようだ。
*「君たちはどう生きるか」 ☆☆☆ 宮崎駿監督、脚本。スタジオジブリ。 基本的にジブリは自分向きではない。 時空超えた異世界の設定はまさに宮崎ワールド。彼の宇宙観、死生観の反映か。映像とキャラクターの楽しさが人気の秘密か。
*「高野豆腐の春」 ☆☆☆☆ 三原光尋監督、藤竜也、麻生久美子。 温かく、楽しく、ほのぼのとする泣き笑いのできるハッピーなドラマ。 麻生演じる妻の連れ後の娘、藤竜也演じる父の父娘物語。
*「福田村事件」 ☆☆☆☆ 森達也監督、井浦新、田中麗奈。 100年前の関東大震災で起きた朝鮮人への流言飛語。デマ。 とてもおぞましい事件だ。事件に乗じて朝鮮人を不満の受け皿にした。全体主義の国でありがちだが現代日本でもあり得る。こうした類のデマを信じてしまうという集団心理は3.11でも確かに見られた。反骨精神のある作品。
*「月」 ☆☆☆☆ 石井裕也監督、宮沢りえ ズシリと重い作品。重度の障がい者と向き合うときのホンネとタテマエ、現実ときれいごと。このことを自分事として感情移入できるような工夫がある。 間違えた正義感は狂気となる。
*「法廷遊戯」 ☆☆☆ 深川栄洋監督、五十嵐律人原作、永瀬簾、杉咲花。 練られた面白いストーリー。短い上映時間(97分)も好感持てる。 人質司法による自白の強要という問題提起もあり。
*「スイッチ」 ☆☆☆☆ マ・デユン監督、クォンサンウ、オジョンセ、イ・ミョンジョン。 サクッとしていて小気味いい。人生の入れ替わりという映画のような映画?小さくまとまっている感じ。
*「市子」 ☆☆☆☆+☆半分 戸田彬弘監督・原作、上村奈帆脚本、杉咲花、若葉達也、森永悠希。 見応え、考え応えのある作品。まずは無戸籍という社会問題について考えさせる。 映画のストーリーがサスペンス&ロードムービー仕立てで引き付けられる。「怪物」もそうだが、多面的な視点から主人公像が語られる。 主人公市子(いちこ)のある種の魔性を具えたハードボイルドで艶やかな女を、杉咲花が見事に演じている。法廷遊戯以上。カメラワークにも臨場感があり。 |