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通常国会を終えて

 「ローマ帝国末期の政策は、パンとサーカスの政策と呼ばれています。すなわちご機嫌取りの政治が行われた結果、人々の自立心やプライド、モラルが失われ、ローマ帝国の衰退は加速されたといわれています。今、求められているのは、これまで申し上げてきたような国と地方の関係や、財政、経済などの構造改革に正面から立ち向かう勇気と覚悟であり、歴史の評価に耐えうる政策を断行する気概と実行力であります。森首相の政治は、難問を避け、ご機嫌取りに終始するにもかかわらず、国民のご機嫌を損ねてしまう政治であります。」

通常国会前半の2月22日、衆院本会議の質問において、私は、森首相の政治を上記のように評した。(質問全文は第8号本会議録)

歴史的転換点にある日本において、政治に求められているのは、構造改革に正面から立ち向かう「覚悟」とそれを支え得る「体質」である。

4月26日、小泉首相が誕生した。

時に捨て身とも感じる小泉さんの姿勢が本物なら拍手である。

しかし、仮に小泉さんの「覚悟」が本物であったとしても、果たして自民党にそれを支える「体質」が備わっているのだろうか。

例えば、KSD事件に見られる政官業癒着体質に何か変化があったのか。小泉さんの脱派閥の呼びかけに応じた自民党議員は何人いるのか。

「覚悟」と「体質」の双方を備えた政権政党が必要である。

6月27日、経済財政諮問会議における“骨太の方針”が明らかになった。一言でいえば準備不足である。私がネクスト総務大臣として担当している地方分権政策もその一つである。

地方分権に必要な個別の政策は、すでに多くの識者が何年も前からくり返し述べている。地方交付税や補助金の改革、国から地方への税源の移譲などである。骨太の方針でも、地方に対する国の関与を弱めることによって、補助金や交付税を縮小し、税源移譲を検討するとしている。

 しかし、地方分権を実現できるかどうかは、こうした個々の政策をどのような順序で、どう組み合わせ、どのようなタイムスケジュールで進めるかが分かれ道となる。したがって、手順やタイムスケジュールを明らかにしてはじめて、実のある政策論議ができるのである。

 骨太の方針では、手順やタイムスケジュールは、はっきりした形で示されていない。しかし細かい記述に注意しながら読んでいくと、手順についてはおおよそ次のように推測できる。

①国から地方への関与を縮小

 ②補助金と地方交付税を削減

 ③地方による歳出カット

 ④国から地方へ税源を移譲

 最大の問題は、補助金と交付税の削減(②)つまり地方の財源を締めることによって地方に歳出カットをさせる(③)という発想である。これでは、「まず補助金と交付金の削減ありき」「地方切り捨て」などと批判されてもやむを得まい。

 私は、地方分権の突破口は、平成13年度予算で16.9兆円にも及ぶ補助金・負担金の改革だと考える。具体的には国主導による補助金の削減ではなく一括交付金化である。現在は国によって細かく決められている補助金・負担金の使いみちを自由にして、地方自治体の裁量の幅を広げてから削減などの話をしないと、分権は前には進まない。「まず補助金・交付税削減ありき」というやり方ではいけないのである。

 もちろん、すべての補助金・負担金を一挙に一括交付金に衣がえするのは現実にはむずかしい。一つ一つの内容を再吟味しなければいけないし、補助金・負担金の根拠となっている個々の法令の改正作業も必要だからだ。したがって、まずは公共事業関連の補助金・負担金だけを先行して一括交付金化する、次に、社会保障関連、さらに教育関連というように、何段階かに分けて進めていかざるを得ないだろう。

 骨太の方針では、国から地方への税源移譲がうたわれているが、実際には骨抜きにされる危険性がある。というのは、地方の歳出がカットされるために(③)、税源移譲額が少なくて済むと予想されるからである。

 いまさら言うまでもなく、地方分権の基本軸は、権限と財源を地方に移譲することである。税源移譲は地方分権政策のメインテーマであり、少なくとも国と地方の税収比率を何対何にするという方向性くらいは骨太の方針に盛り込むべきだった。

 税源移譲がこれまで実現できなかったのは、自治体によって財政力が著しく異なるということに尽きる。たとえば国の所得税の税率を下げて地方の住民税の税率を上げると、大都市の自治体では税収はかなり増えるのに対して、過疎の自治体ではわずかしか増えない。その場合、自治体間の歳入をならすために財源が必要となるが、地方交付税だけでは足りないのである。

 交付税に、補助金・負担金から衣がえした一括交付金を加え、それを自治体間の財政調整につかうことによって、税源移譲の実現がはじめて視野に入ってくる。このように補助金・負担金改革を切り口にして、国によるコントロールから地方を解放し、個々の政策を有機的に結びつけることが、真の地方分権を実現するためのカギなのである。

 国と地方の関係をどう考えるかは、参院選挙の主要争点になっていくだろうと思う。

(地方分権についての玄葉質問は平成13年6月15日総務委員会議事録)

 

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