平成19年を迎えて
あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
心より御礼申し上げ、皆様の本年のご多幸をお祈り申し上げます。
司馬遼太郎さんは徳川家康について「彼の臓腑は体験と教訓によってつくりあげてられている」と表現されました。領土を奪われるほどの敗戦はないが、彼ほど敗走を経験した武将はいないと。
「人生万事塞翁が馬」―― 順境なお良し。逆境また良し。
全ての経験を教訓・糧として獲得し、自らを成長させてゆきたいと思います。
昨年一番うれしかったことは知事選での勝利でありました。同僚であった佐藤雄平参議院議員を擁立し、「県民党」という立場で皆で一致団結して当選という結果を得られましたことは、私にとっても、また民主党にとっても大変意義深い喜ばしいことでありました。改めてご支援を頂いた多くの皆様方に御礼申し上げます。
都道府県別の高卒新卒者の求人倍率に関するデータ(平成18年7月)を調べていて衝撃を受けました。全国平均倍率は0.85倍、わが福島県が0.60倍なのですが、全国で最も高いのが東京で4.41、それに対し最低の青森県は0.17。実に26倍もの開きがあるのです。生まれ育った地域によって就職の機会に圧倒的な差が存在している。許容の範囲を明らかに超えています。本人の努力とは無関係ですから。
同一地域内・同一業種内・同一企業内でも格差は広がってきております。先日、某大手銀行の求人広告を見かけたのですが、都心支店での窓口受付業務で時給が1000円。単純に計算しても年収が200万に満たないのです。最高益を更新している銀行内でも、いわゆる「ワーキングプア」が存在しています。
こうした個人の努力とは無関係の許容範囲を超えた不公正・格差を是正することが今年の政治の最大のテーマになるでしょう。
私は、努力して起業したり出世したりした人が富を手にするということは、当然のこととして素直に認めつつ、日本は多様で厚みのある中間層を形成していくことが重要であると考えております。そのためには最低限の機会の平等を保障するとともに、行き過ぎた格差を予防・修正する制度の構築を急がなければなりません。
今年度、企業の業績回復による法人税の増収などを受け、全体では7.6兆円の増収が見込まれております。政府予算案では増収分のうち4.5兆円は国債費の削減に回され、残りの約3兆円は減税の財源等に充てられるようです。
堅調な景気拡大が予算にも反映された形ではありますが、大きな問題点はその好景気、企業の増益が生活や地方に波及していないということであります。来年度の減税も企業減税中心であり、逆に定率減税の廃止や社会保障費の負担増によって、人々の「暮らし及び将来」に対する不安・不満はますます大きくなっています。
私たちは、国民の暮らしや生活に焦点をあてた政治活動に取り組むとともに、「生活」「家計」の視点に立った政策を参議院選挙のマニフェストなどを通して発信してゆかねばなりません。
本年は、農業政策も大きな転換期を迎えます。
新たに実施される経営安定対策では、担い手となる経営規模を個人4ha、集落営農20ha以上としていますが、この対象要件で日本の農業・農村、そして各集落が果たして維持・発展していけるのでしょうか。
民主党は、集約できる農地は集積しながらも、全ての販売農家に所得補償する制度が必要であると考えます。我々の試算では、その財源となる約1兆円は、転作関係の補助金と農業土木費から十分に充当できます。
意欲ある全農家を対象とすることで農業・農村を活性化し、食料自給率の向上も図る。
日本農業の再生には、確かに市場主義的改革も必要です。しかし、「過ぎたるは及ばざるが如し」。市場原理主義に偏りすぎる農政は、逆に農業の崩壊を招きかねないのではと強い危機感を抱いております。
私は、日本は「懐の深い社会・国家」を目指すべきであると考えています。
日本には日本独自のバランスがあってよいと思います。市場主義改革はまだ必要であるが、市場原理主義・市場偏重になる必要はないのです。
効率と公正のバランスのとれた、深みと味わいのある豊かさを実感できる社会、脆弱な単層的社会ではなく、厚みのある重層的な社会を創り上げたいと思います。