『キャタピラー』 : 若松孝二監督、寺島しのぶ、大西信満
6月から鑑賞した映画は「孤高の人」(成島監督)、「ロストクライム」(伊藤俊也監督)、「ソルト」(アンジェリーナ・ジョリー主演)、DVDで「幸せの隠れ場所」(サンドラ・ブロック主演)。
2年前、「連合赤軍」を観た。連合赤軍内部の実像が生々しく描かれていて衝撃的だった。若松監督作品を見るのは2本目だ。
非常にわかりやすいメッセージである。
「忘れるな、これが戦争だ。」
「戦争は弱い人たちにこそより悲惨なものである。」
「正義の戦争なんてない。」
戦争を通して、人間の本質や本能を描いている。両手両足を失い、耳も口も不自由な夫が戦地から帰ってくる。軍神として崇められる夫は、食べて、寝て、セッ クスしての繰り返し。介護し世話をする妻は、そんな夫を憎くてたまらないが、殴ってしまった後は夫を抱きしめる。そして夫は戦地で女性をレイプし殺害した ことに苛まれ続ける。男と女、母性についての物語でもある。
ベルリン映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)を受賞した寺島しのぶさんの演技は、まさに筋金入り、プロフェッショナルだ。12日間という短期間の撮影で、ほとん どが撮り直しなしだったというから驚きである。若松監督に言わせれば「この種の演技は一度しかできないから撮り直す意味がない」という。撮影費用はおそら く3~4千万円程度ではないか。
若松孝二監督に先日、お会いする機会があった。撮影の状況や俳優たちのことを茶目っ気いっぱいの笑みを浮かべながら語ってくれ、楽しい会話であったが、最後に沖縄に米軍基地は要らない、なんとかしてくれと言われたのにはただ閉口するばかりであった。
(右画像は映画パンフレットより)
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