10月の映画 『ヴィヨンの妻』
総選挙で中断していた今月の一本、今月の一冊を再開します。 偶然だが、映画化されようとしていることを知らずに、今年になって原作を読んだ。その際は変な小説で奇妙な夫婦像を描いているなというのが率直な感想であった。 その難しい原作を上手に脚本し、余韻の残る作品に仕上げている。好きな映画である。 根岸監督はモデルを太宰自身だと言う。とても気の弱い、神経が異常なまでに過敏な太宰は何度となく自殺未遂を繰り返し、結局心中してしまう。なのに、作品のラストは「生きてさえいればいい」というもの。どう解したものか。 好きな映画としたのは、男心と女心のそれぞれの一つの本質が繊細に描かれていると思うから。男の甘えや母なる愛・無償の愛への欲求、不器用さ、そして女のたくましさ、しなやかさ、したたかさ。 (右画像は映画パンフレットより) |