2017年4~6月の映画
☆の数は5つが満点 ・「大人の事情」 ☆☆☆ (伊)パオロ・ジェノベーゼ監督 ・「ライオン」 ☆☆☆☆ (豪)ガース・デイビス監督、デブ・パテル、ニコール・キッドマン ・「追憶」 ☆☆☆☆ 降旗康男監督、岡田准一 ・「光をくれた人」 ☆☆☆☆ (米・豪・NZ合作)デレク・シアンフランス監督、マイケル・ファスベンダー、アリシア・ ビカンダー 原作ステッドマン「海を照らす光」 ・「家族はつらいよ2」 ☆☆☆ 山田洋次監督・原作・脚本、橋爪功、吉行和子 ・「花いくさ」 ☆☆ 篠原哲雄監督、野村萬斎、原作鬼塚忠
・「大人の事情」~イタリア映画らしい。月食の夜、3組のカップルと1人の独身男性がメールを見せ合うゲームをする。そういうテーマは思いつくようでなかなかそうはいかないものだ。中盤からのテンポの良さ。96分という短時間に小気味よく収めた技術。仮にこんなゲームをしたらこうなりますよという意味で、月食が終わると同時にラストとなり、元通りの人間関係に戻すところなどよく考えられている。低予算でも面白いものをつくれるのだと感心した。 ・「ライオン」~コルカタの雑然としたすさまじいエネルギー、タスマニアの自然の美しさを背景に繰り広げられる感動のヒューマンドラマ。インドの5歳の貧しい迷子少年が、オーストラリア人夫妻の養子となり、立派に成長したのち、故郷と母親を探し出す。サルー少年がなんとも愛くるしくかつたくましい。インドの貧困事情や里親制度を理解するのにも良い作品。グーグル検索でコルカタから1000キロ以上離れた家を探し出すというのも新味があっていい。満点に近い評価。 ・「追憶」~北陸富山の詩情豊かな映像、ラスト含め心に染み入るシーン、それらとマッチした千住明さんの音楽でしっかり仕上がっていると思う。古くさいとかストーリー展開が物足りないとの批評もあり得ようが、僕にはとにもかくにも好印象。降旗作品では、高倉健の「駅(ステーション)」(1981)がいい。学生の頃はわからなかった良さだが、最近はわかってきた気がしている。それだけ年を取ったということなのだろうか。 ・「光をくれた人」~良作。第一次世界大戦後のオーストラリアが舞台。戦争から帰還した兵士が灯台守として孤島に赴任。その自然の美しさと厳しさを映し出すさまはなかなかの迫力。そしてストーリーがディテイルまで映像でしっかり表現されている。誠実と愛にあふれ、それに人間らしい葛藤が加わり感動的な作品になっている。 ・「家族はつらいよ2」~熟年離婚騒動を描いた前作の続編。高齢者運転免許の返上、無縁社会、下流老人など現代的テーマを軽妙なタッチで扱う。さすが山田監督とも思うが、前作のほうが納得感あり。物足りない感じ。 ・「花いくさ」~池坊専好という実在の花僧に野村萬斎が扮し、くり広げるエンターテイメント。池坊のスタートが花僧だったことをはじめて知った。野村の狂言的な顔芸はときに魅せると感じたが、全体的にはどうしても「池坊のための」宣伝映画に見えてしまう。
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