2019年1月~6月の映画
☆の数は5つが満点
・「家(うち)へ帰ろう」 (スペイン・アルゼンチン)パプロ・ソラロス監督、ミゲル・アンフル・ソラ ☆☆☆☆ ・「夜明け」 広瀬奈々子監督、柳楽優弥、小林薫 ☆☆☆ ・「バーニング」 イ・チャンドン監督、ユ・アイン ☆☆☆☆ ・「ローマ」 (メキシコ・米)アンフォンソ・キュアロン監督、ヤリッツァ・アパリシオ ☆☆☆☆ ・「ブラック・クランズマン」 スパイク・リー監督、ジョン・デビッド・ワシントン ☆☆☆☆ ・「初恋、お父さんチビがいなくなりました」 小林聖太郎監督、倍賞千恵子、竜達也 ☆☆☆ ・「僕たちは希望という名の列車に乗った」 (独)ラース・クラウメ監督 ☆☆☆☆☆ ・「海獣の子供」 渡辺歩監督、五十嵐大介原作 ☆☆☆☆
・「家へ帰ろう」~88歳の主人公が、最後に仕立てたスーツをプレゼントするという友人との約束を果たすために旅に出る。アルゼンチン→マドリード→ポーランドを巡るロードムービー。人生でやり残したことを88歳にしてやろうとする頑固さと意思の強さに共感する。 ・「夜明け」~30歳の若さでの監督デビュー作。親と子、人間同士の「間合い」の取り方という人生経験が長くないとなかなか扱えないテーマにチャレンジしている。人は必要とされないと生きられない。でも必要とされ過ぎると生きにくい。いい塩梅の距離感について考えさせる。「冬の小鳥」という作品が好きという新人監督の今後に期待する。 ・「バーニング」~村上春樹の短編小説「納屋を焼く」が原作だが、大胆にアレンジしている。謎が多い作品で見終えて考え込む。北朝鮮との国境線近くでの対南放送や格差社会といった現代韓国社会が抱える問題を織り交ぜながら物語は展開する。伏線だらけのストーリー。明確にはなっていないが、結局は猟奇的な殺人事件のものがたりだと想像する。好き嫌いがはっきりすると思うが、見応えはある。 ・「ローマ」~オリンピック直後の70年代のメキシコが舞台。ひとりの家政婦の人生を美しくもはかなく描く。モノクロ映像でカメラワークがとても巧みであるように思う。小津安二郎的な哀感漂う作風。 ・「ブラック・クランズマン」~黒人刑事が白人至上主義団体(KKK)に潜入捜査した実話を映画化。人種差別は映画になりやすい大テーマ。米国はトランプ大統領を誕生させる国だが、メディアの批判精神は旺盛だ。翻って現在の日本のメディアは政府広報化したと言われるNHKはじめ本当に大丈夫? ・「初恋、お父さんチビがいなくなりました」~原作は漫画。いい感じのホームドラマに仕上がっている感じ。最近は化石化したような昭和の夫とあまたいそうな妻との関係をコミカルにテンポよく描く。竜達也と倍賞千恵子の演技が上手。 ・「僕たちは希望という名の列車に乗った」~実話のようだ。事実は小説よりも奇なり。高校生たちの正義感と勇気と行動力を賞賛したい。かなりの秀作。 ・「海獣の子供」~「人はどこからきてどこに行くのか?」深遠な大テーマに挑んでいるようなアニメ。海が子宮、隕石が精子だとか。いのちの循環。人はあくまで宇宙や自然のごく一部という宇宙観、自然観、人間観がにじみ出ている。工夫を凝らした映像美に拍手。若者の来場者が多いのに驚いた。
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