2020年の観賞映画
✤コロナ禍ゆえ例年の半分以下でした。 ☆の数は5つが満点 ・「パラサイト」(韓国) ☆☆☆☆ ポン・ジュノ監督、ソン・ガンホ 2019年のカンヌパルムドール作品。韓国では初受賞。カンヌは「家族」と「格差」が好みなのか。格差社会の悲しみをスリリングに楽しく見せる。ストーリーも演技も見事。ポン・ジュノ監督作品では「母なる証明」も凄いと感じたが又も傑作。
・「37セカンズ」 ☆☆☆☆ HIKARI監督、佳山明 「障害者の性」という重いテーマを正面から取り上げつつ、エンターテイメント的に仕上げたハッピーエンド。ポジティブな全体トーンが好き。秀作だと思う。
・「Fukushima50」 ☆☆☆☆ 若松節男監督、渡辺謙、佐藤浩市 2011年の3月11日の原発事故における50人の作業員の命がけの奮闘を描く。事実の物語と銘打ってスタートするが、「官邸が海水注入に疑義」とか「2号機の圧力低下で当面の危機が終息」(実際の最大の危機は4号機の使用済み核燃料プール)とか「米軍が良く描かれ過ぎている」とかファクトとしては首をかしげる場面がいくつか目につく。これらの部分は当時の実情を少なからず知るものとしては物足りない。 他方、一進一退の原発事故現場に残った50人の作業員の覚悟は本物だし、後世に伝えるべきことだ。彼らは、故郷と家族を守るための命をかけて格闘した。それがなければ東日本は壊滅したかもしれない。まさに英雄である。しかし、事故を起こしてしまった加害者的立場も併せ持つ彼らはいまなお相克を抱えながら生きているのが現実だ。
・「精神0(ゼロ)」 ☆☆☆ 想田和弘監督 コロナ禍で映画館に行ったのは2か月ぶり。山本昌友さんという精神科医の生き方に感銘した。聞く力と人柄で患者目線を徹底する精神科医版の赤ひげ先生。文字通り、「この道より我を生かす道なし。この道を歩く」。診察室に掲げられた武者小路実篤の色紙の言葉通りだ。後半は痴ほう症となった妻との向き合い方を描いていく。どこまでも自然体。日常を切り取られて、人に感動を与えられる生き方ができるというのが凄い。ここに目を付けた製作者の想田さんと柏木さんもすごいと思う。
・「Story of my life」(米国) ☆☆☆☆ グレタ・ガーウィグ監督 原作は若草物語 南北戦争中の米国の中流家庭の4姉妹の成長物語。家族愛と女性の自立がテーマで心が和む。前半は冗長。後半はストーリーがいい。
・「マルモイ」(ことばあつめ)(韓国 )☆☆☆☆ オム・コナ監督、ユ・へジン、コ・ゲサン 古から今に至るまで平和で安定した朝鮮半島が日本には重要だ。かつて山形有朋は「利益線」と呼んだ。背景には対露関係、対中関係がある。 1940年代の日本統治時代のソウルでは創氏改名、日本語の強要があった。朝鮮半島は歴史的に「小中華」といわれても、日本統治下にあってもしたたかに独自の文化を守り育ててきた国。漢字でもひらがなでもなくあくまでもハングルなのだ。つくり方がエンターテイメントに仕上げていて上手。
・「赤い闇」(ポーランド) ☆☆☆ アグニェシュア監督、ジェームス・ノートン スターリン体制下のソ連。世界恐慌なのにソ連は豊かだと喧伝された。潜入した敏腕記者が見たものはウクライナにおける目に覆うばかりの飢餓の現実。さもありなん。当時は普通にあったこと。「事実を伝える」というジャーナリズムの最もシンプルな役割の重要性をかみしめる。
・「海辺の映画館」 ☆☆☆ 大林信彦監督、厚木拓郎 大林監督のとにかく戦争はダメという強いメッセージを感じた。戊辰の会津、日中戦争時の中国、沖縄、そして女性とその時々で虐げられてきたものへの温かいまなざしを感じる。これまで見たことのないような映画でチャレンジングとも思うが、3時間の上映時間はあまりに長かった。特に最初の1時間は退屈だった。
・「チャレンジド」 ☆☆☆☆ 小栗健一監督、細川佳代子総指揮 チャレンジドという言葉を10数年前に初めて耳にしたとき、とても肯定的な印象を受けたのを覚えている。チャレンジすることを宿命として生きる。まさに人間の可能性に挑戦しているのだ。「ふつうの場所でふつうの暮らし」これが難しい。北欧ですら壁にぶつかっている様子が描かれている。インクルーシブな包摂力のある社会を考えるために観ておきたい映画。
・「スパイの妻」 ☆☆☆☆ 黒沢清監督、蒼井優、高橋一生 ベネチア映画祭銀獅子賞。黒沢作品の「トーキョーソナタ」、「岸辺の旅」、「旅の終わり、世界の始まり」を観て、つかみどころのないイメージを抱いていたが、今回はわかりやすい作品だ。専門的な細部はわからないが、技術的にもとても巧みでお手本のようだ。お見事だ。 戦時下を扱いつつ、監督はインタビューでは「告発ではない」とする。他方パンフレットでは、「現代日本でも我々は明日にも狂気の沙汰へ転落する危機と隣り合わせている」と語っている。小説も出ているが、映画が原作らしい。
・「鬼滅の刃」 ☆☆☆ 外崎春雄監督 吾峠呼世晴原作 歴史的大ヒットとなった。時代の潮流なのだろうが、自分には理由がよくわからない。せりふや絵もなるほどとは思うし、ストーリーも勧善懲悪でわかりやすい。何より多くの人を惹きつけるのは、主人公の優しさや家族愛なのか? |
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