2024年(前半)鑑賞映画
☆5つが満点 *「パーフェクトデイズ」(ドイツ) ☆☆☆☆+☆半分 ベンダース監督・脚本 役所広司、榎本時生 自分のリズムで簡素に生きる。自然の少しの変化や下町の生活の息吹を五感で楽しむ。目覚ましもない。テレビもない。ストイックな一人の日本人の暮らしを美しく描いている。ファッショナブルな公共トイレと清掃員ユニフォームを含め東京をカッコよく紹介していて、監督の日本好きがうかがえる。小津安二郎の大ファンだという。ラストシーンの役所の泣き笑いは小津作品を意識したものだとか。
*「ゴールデンカムイ」 ☆☆ 久保茂昭監督、山崎賢人、山田杏奈、 人気漫画を実写化。一言でいえば、肌に合わない作品。それなりに引き付けるストーリーだが一回で完結してほしい。当然続編にも興味湧かない。 主人公の砂金探しの動機が幼馴染の眼の治療費。大金までは不要。
*「ビニールハウス」 ☆☆☆ イ・ソルヒ監督・脚本、キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン 釜山映画祭3冠。一定の面白さはあるが、粗削りで練度が足りないと感じた。 脚本と監督は29歳の気鋭の新人。そういえば自分の国政初出馬も同年齢だった。振り返れば当時の自分は結果として自らの主張を強く打ち出していただけだった。相手(有権者)が何を聴きたがっているのか、相手の立場に立ったらどうなのかなどはあまり考慮に容れる余裕がなかったのだ。僭越だがそれと同じなのかも知れないと感じた。伝えたいことはわかるが伝え方の熟度が低い。ゆえに突っ込みどころ(違和感)が多くなってしまう。 俳優の演技は素晴らしかった。
*「貴公子」 ☆☆☆ パク・フンジョン監督、キム・ソンホ、カン・デジュ 劇場で初めての経験だったがビールを飲みながらの映画鑑賞。飲みながら観るのに程よい作品。深みはない。韓国特有のバイオレンス付き。最後になって登場人物の関係性がわかってくる。完全には外さない韓国映画の安定感。そこそこ楽しめる。
*「アモーレ最後の夜」(イタリア) ☆☆☆☆ ステファノ監督、ファビーノ、イタリア映画祭(朝日ホール) 上空からの映像にドローンでなくヘリを使ったり、一貫してフィルム撮影だったりして、随所にこだわりを感じる。伏線の設定を含めて面白い。監督は上映後のインタビューで黒澤明を称賛。イタリアの新リアリズムに強く影響与えたと語った。ファビーノの演技力光る。
*「オッペンハイマー」 ☆☆☆ クリストファー・ノーラン監督、キリアン・マーフィー、エミリー・ブラント 前評判ほどでない。やはり長すぎる。 原爆開発者としての苦悩はもっともだし彼の人間味をとても感じるところ。日本への投下を決定したトルーマンが自己正当化に徹し、何ら後悔もしていなかったことを考えるとなおさらだ。ただ、彼がいなくても誰かが原爆を開発していたことだろう。映画を通じて多くの人に「核」について考えをめぐらす良い機会になればと願う。
*「悪は存在しない」 ☆☆☆☆ 濱口竜介監督、大美賀均、西川怜 いかにも欧州受けしそうなラストシーンが強く印象に残る作品。 106分と短いのに、冗長に思えるような映像が続く前半。後半は「どっちともいえないことを丁寧に描いた」(監督談)という場面がダラダラ。一体どういうふうにラストをまとめるのかという思いで観つづけた。「鹿猟」、「手負いの鹿は人を襲う」、「子どもの一人歩きは危ない」などさまざまな伏線あっての衝撃のラスト。インパクト重視の作り方。ラストの意味するところはいまだにわからない。
*「かくしごと」 ☆☆☆☆+☆半分 関根洋才監督、北国浩二原作、杏、奥田瑛二 いい映画だと思う。ストーリー、ラストシーン、俳優陣の演技力、映像等の総合力で高い点数をつけたい。 今どきの地方公務員は山村であっても飲酒運転などしないし、いくつか無理な設定があった。ただ、介護や虐待などのシーンも「あるある」というリアルな場面となっていたし、全体として心に沁みる物語となっている。 痴ほう症老人役の奥田瑛二の演技が印象に残る。 |
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