「奇跡のリンゴ」の感想を綴って以降(2013.6月)、昨年中に鑑賞した映画は約10本。
「きっとうまくいく」(3Idiots、インド、ラージクマール・ヒラーニ監督、アーミル・カーン主演)、「ショート・ピース」(大友克洋監督他)、「風立ちぬ」(宮崎駿監督)、「華麗なるギャッツビー」(The Great Gatsuby、米国、バズ・ラーマン監督、レオナルド・ディカプリオ主演)、「標的の村」(三上智恵監督)、「人類資金」(阪本順治監督、佐藤浩市主演)、「49日のレシピ」(タナダユキ監督、永作博美主演)、「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)、「永遠のゼロ」(山崎貴監督、岡田准一主演)など。
その中でのベストは「きっとうまくゆく」というインドのコメディドラマ。技術的にも無駄がなく、観客を幸せにする、世界中で愛されそうな作品に仕上がっている。教育の本質論にも踏み込む。テンポがよく3時間の上映時間もあっという間に過ぎた。
今年になって観た映画は6本(3月末時点)。
「ゼロ・グラビティー」(Gravity、米国、アルフォンソ・キュアロン監督、サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー主演)~デブリにより国際宇宙ステーション(ISS)に事故が起きるという設定は現実にあり得ること。2月28日、種子島でのH2Aロケット打ち上げを視察した。その際JAXA関係者とこの作品が話題となったが、専門家をしても「リアルな描写」だそうだ。政府で宇宙開発担当をしていた頃、日本人初の宇宙飛行士である毛利衛氏から、NASAでの訓練では「Think Ahead」(常に想定外を想定して先を考えろ)という思考法を叩き込まれたという話をうかがった。そのことを思い出しながら観ていた。
「ハンナ・アーレント」(ドイツ、マルガレーテ・フォン・トロッタ監督、バルバラ・スコヴァ主演)~ナチスからの迫害を逃れ米国へ亡命したユダヤ人女性哲学者ハンナ・アーレントの生涯を描きながら、彼女を通じて「戦争責任」を語らせる。そして、ヒトラーは根源の悪だが、その追従者は凡庸の悪にすぎない。その思考力の無さがホロコーストを引き起こしたと喝破する。善悪や戦争責任について考えさせる作品。
「東京難民」(佐々部清監督、中村蒼主演)~主人公時枝の不器用さにじれったくなるが、ネットカフェ難民の実状を映し出していると思われる作品。「居場所」というコトバが2度使われていたことと、生活保護受給者に「何もすることがないのが最もつらい」と語らせていることが印象的。「一度堕ちても今以上に這い上がれるしくみ」にはどんなものがあり得るのか、それがしくみなのかどうかも含め、改めて考えさせられた。
「大統領の執事の涙」(The Butler、米国、リー・ダニエルズ監督、フォレスト・ウィテカー主演)~ホワイトハウスで7人の大統領に仕えた黒人の執事の半生を描く。そのまま米国の公民権運動の歴史をたどれる。歴代大統領のそれぞれの性格描写に思わず笑ってしまった。
「あなたを抱きしめる日まで」(mother‐son、英国、スティーヴン・フリアーズ監督、ジュディー・デンチ主演)~実話。1950年代のアイルランドカトリックの現実を初めて知った。ショッキングな出来事を母子の愛情と巧みなユーモアを加えうまくまとめている。ジュディー・デンチの名演が際立つ。
「ローン・サバイバー」(Lone Survivor、米国、ピーター・バーグ監督、マーク・ウォールバーグ主演)~アフガニスタンでの米軍の海軍精鋭部隊とタリバンとの戦闘シーンの連続。かつての「ブラックホーク・ダウン」と同じように米軍の失敗した作戦で勇敢に闘った兵士を称えるノンフィクション。私も2年前現地を訪問した。たった一度なので知ったかぶりはできないが、文明と侵略の十字路といわれるほどアフガニスタンは民族や文化が複雑に入り組んでいる。映像は山岳地帯が連担する風景も含め実相をうまくとらえているように思えた。米軍撤退を年末に控えアフガニスタンの治安状況は依然深刻であり強く懸念している。
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