武力攻撃事態への対処に関する特別委員会(平成14年5月7日 議事録)
〇玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。私は、緊急事態に備える法整備は必要だというふうに思っています。ただ問題は、できばえだということだと思います。実効性が余りになかったり、あるいは過度のあいまいさとかごまかしがあったりするならば、つくり直して出し直してもらった方がよいのではないか、そう考えています。率直な御答弁をこれからお願いしたいというふうに思います。各論に入る前に、総論を一つだけ聞いておきたいというふうに思うんです。それは内閣の情報体制という課題であります。これは、この有事関連法制に密接に関連をすると同時に、ある意味ではそれ以前の最重要課題だと言っても過言ではないというふうに思うんです。情報が、この場合、インテリジェンスという意味での情報というニュアンスが強いですけれども、情報が的確に収集をされて、分析をされて、もちろんその前に伝達されて、活用されなければ、そもそも武力攻撃事態の認定もできなければ、あるいはその後の的確な対応ができなければ、あるいは、我々とても大事にしていますけれども、事前に紛争の芽を摘むということもできないわけであります。この内閣の情報体制について、果たして総理は、現在十分であるというふうに考えておられるか、まずお伺いをしたいと思います。
〇小泉内閣総理大臣 これはなかなか難しい問題でして、情報が十分かどうか。
情報の持つ重要性というのは今も昔も変わらないと思います。特に専守防衛という体制をとっている我が国におきましては、まず、いかに国際情勢あるいは安全保障情勢、国内の危機に対する情報を収集していくか、その機関なり体制を整えていくか、人員をどのように的確に配置していくか、これは大変重要な問題であります。その情報の収集と分析については、いかに十分な体制をとるかということは、まあ限度がないと思いますけれども、できるだけの体制をとって、誤りない情報の分析、収集に努めていきたいと思います。
〇玄葉委員 私は、率直に言って、現状は、残念ながらお粗末だというふうに思っています。例えば、日米安保の将来という議論をするときに、私自身も大事だと思っていますけれども、戦略対話だ、こういう話が出てきます。あるいは情報の共有だ、こういう話も出てきますね。だけれども、私も当選して以来、アメリカの担当者と話をすると、戦略だ、情報の共有だと言ったって情報が筒抜けになるじゃないかと、直接、間接によく言われます。こういう問題がまず一つありますね。それに、逆に、例えば情報を漏らさないようにというふうに仮にしたとしても、我々は、残念ながらといいますか、米国に情報を依存している側面が強いと思います。そうなると、逆にアメリカに振り回される、こういう危険も率直に言ってある。あるいは、もう一つ例を挙げますけれども、今引き揚げ中の不審船、この不審船が発見されたときに、一体、当初、官邸はどういう判断をしたか。これは中国の密輸船ではないか、中国の密航船ではないかというふうに判断をしたのではないかというのは、いわば公然の秘密と言ってもよいのではないかというふうに思うんですね。ですから、これは全くお粗末な状態ではないかという危惧を持っているわけですけれども、課題は何だというふうにお考えになっておられますか。
〇小泉内閣総理大臣 これは、表に出せる情報と出せない情報があるといった、今玄葉議員の指摘、確かにあるんです。官邸としては、この武装不審船の問題につきましてはそれぞれの場合を想定して、またある国のことを想定して、どのような態勢をとるべきか、海上保安庁がやるべき問題、自衛隊がどこまでやっていいかという問題、いろいろ含めて対応したわけでありますが、こういう観点から、私は、最近の情報の重要性を見ると各国との共有という問題も非常に重要だと思っております。そこで、各国との情報の交換、共有というような場合、情報の交換と同時に情報の秘密をいかに守るかということも非常に重要だということを、私はいろいろな各国との首脳の会談でも経験的にわかってまいりました。どの程度こちらが言っていいのか、また相手の情報をどの程度公表していいのかというのは非常に難しい問題であります。こういう問題もありますから、それだけに日本国内だけの問題ではない、相手国の問題のある場合、相手国が一国だけの問題、複数に絡んでいる問題、こういう問題につきましても私は、情報の共有と、情報の秘密をいかに守って国民の安全を確保するかというのが非常に重要でありますので、情報の重要性というものを、これは日本としてもよりこの情報収集体制、分析体制について細心の注意、強化が必要だと思っております。
〇玄葉委員 課題はたくさんあると思うんです。
これは先ほどの戦略対話とか情報の共有という意味からは、総理も御答弁されたように漏れるという話がある。先ほどの不審船の話からは、十分に正確に伝達されないあるいは分析されないという側面も現状だ。率直に言ってお粗末だというのは、これは言わざるを得ないというふうに思います。ですから、ここは私は、早急に検討チームをつくって検討に入るというふうにしないと、武力攻撃事態に万全の措置をとるんだ、こう法案に書いてありますけれども、その前の情報収集、分析、活用の体制に万全の措置がとられなければ何にもならない、これが大前提ですよ。今、やじというかお話の中に、機密漏えい防止策の話も出ていました。これは非常に繊細な問題です、率直に言って。漏れるという話からはそういう議論は出てくると思いますよ。これは知る権利との関係だ、あるいは表現の自由との関係だ。誤解なさらないようにしていただきたいんですけれども、例えば個人情報保護法案によるメディア規制というのは、私は反対ですよ。私は反対です。だけれども、もっと言えば、情報公開法の機密の範囲なんというのももっと限定した方がいいと思っていますよ、私は。ただ、より限定された本当に守らなきゃいけない機密に関しては、ここは本当に守れるんだという防止策は私自身はつくらなきゃいけない、そう思っているんですよ。いかがですか。
〇小泉内閣総理大臣 これは一見矛盾しているような話だけれども、重要な指摘だと思っています。というのは、情報を公開するということは、守らなきゃいけない、公開してはいけない情報もあるんです。その線引きというのは非常に難しいんです。この点は、その時々の問題によって、ある人によってはそういう情報は公開すべきだということも言うでしょうし、その情報が公開されることによって非常に安全に対しても、あるいは個人の場合はプライバシーの問題について被害を受ける場合がある。第三者は全く被害を受けない場合がある。こういう点において、情報を公開すべきだという一般論については私も賛成ですけれども、同時に、秘密を守らなきゃならない、公開すべきでない情報もあるという、その両面の対応が私は大変重要ではないかと思っております。
〇玄葉委員 ですから、個人情報保護法のように、表現の自由あるいは知る権利などとの調整を図る必要がないところで図っていて、本当は表現の自由との調整を、いわば本当にぎりぎりのところで収れん点を見つけていかなきゃいけないテーマがこのテーマだと、私自身はそう思っているんです。ぜひ、こればかりやっているわけにはいきませんから、御認識を改めてしていただきたいというふうに思っています。それでは、各論に入りますけれども、岡田政調会長の質問内容とできるだけ重ならないようにしたいというふうに思います。一つは、古典的な武力侵攻よりも周辺事態の方が蓋然性は率直に言って高いと思いますので、周辺事態の関係についてお伺いをしたいというふうに思います。まず、周辺事態法というのは、周辺事態法第一条でこう書いてあります。「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」ということであります。武力攻撃事態とは、これもこれまで議論されてきたとおり、予測の事態、おそれの事態、実際に武力攻撃が発生した事態ということでありますけれども、では、どういう事態が周辺事態と武力攻撃事態と重なる事態なのかということです。重なることは、あるいは併存することは既に答弁で聞いておりますけれども、どういう事態を併存する状態、事態というのかということであります。例えば、確認したいんですけれども、武力攻撃事態、その前に周辺事態があった、周辺事態がすなわち武力攻撃事態になる、すなわちイコールだということではないということは、普通に考えればそうかなというふうに思うんですが、そのことを確認したいということと、もう一つは、わかりやすい例示として、先ほど申し上げたように、周辺事態法の一条に書いてあるんですからね、「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」と書いてあるんですが、このわかりやすい例示として示されているこのような事態は、これは武力攻撃事態になるのですか、重なる事態なんですか、確認をしたいと思います。
〇中谷国務大臣 なる場合もあれば、ならない場合もございます。
御質問にありました、この「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」というのが周辺事態の一例でございますけれども、そのまま放置をすればということでありまして、周辺事態の際に適切に処理をすれば、我が国の武力攻撃事態またおそれの事態に至らない事態で終わる可能性もありますし、その対処がまずければ、我が国の武力攻撃に発展する可能性もあるわけでございまして、この場合は周辺事態でございますが、事態によってなる場合とならない場合があるわけでございます。
〇玄葉委員 本来、先ほど議論されていた予測される事態というのは例示されるべきだというふうに思いますけれども、なかなか、今例示するというわけにいかないでしょうから、あえて、わかりやすくするために幾つか聞きたいと思います。周辺事態というのは、六つ例示をされています。これは御存じのとおり、平成十一年の四月に、政府統一見解として六つ例示をされているわけでありますけれども、それぞれ、その周辺事態のケースが武力攻撃事態に当たる可能性について言及をしていただきたいんです。簡単に申し上げますけれども、六つ。一つ目は、「我が国周辺の地域において武力紛争の発生が差し迫っている場合」、これで平和と安全に重大な影響を与えればこれは周辺事態で、我々は、後方支援をし、捜索救助活動をし、また避難民救援活動をするわけですけれども、この(1)。そして(2)の紛争発生ケース、「我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合」、こういう周辺事態の場合はどうなのか。あるいは、周辺の地域において武力紛争そのものは一応停止した、一応停止したけれども、いまだ秩序の回復、維持が達成されていない。こういう周辺事態は武力攻撃事態に当たるのですか、どうなのですか。あるいは、内乱、内戦が拡大していったケース。これも周辺事態に当たる場合があるわけですけれども、これは武力攻撃事態にやはり当たる可能性はあるのですか、どうなのですか。五つ目は、大量避難民が流入したケース。これも周辺事態に当たる可能性があるわけですけれども、武力攻撃事態に当たる可能性はあるのですか、ないのですか。そして最後に、安保理による経済制裁ケース。経済制裁を行ったときに、これは周辺事態、船舶検査をする可能性があるわけですけれども、そういう事態も武力攻撃事態に当たる可能性があるのですか、ないのですか。以上、お答えいただきたいと思います。
〇中谷国務大臣 今、周辺事態の概念に関する政府の統一見解によりまして、事例を六つ挙げていただきました。内乱や内戦等の事態が発生し国際的に拡大している状況とか、大量の避難民が発生し我が国への流入の可能性が高まっている状況のようなものまで武力攻撃事態に該当することがあるかどうかというふうに御質問をいただきましたけれども、これは、この六つのケースすべて、状況によっては、我が国の武力攻撃のおそれのある場合、または事態が緊迫して武力攻撃が予測される事態に該当することとなる可能性が完全に排除されているわけじゃございませんので、一概に入るか入らないかというのは、その状況等の推移をよく注視をしなければならない問題であると考えております。
〇玄葉委員 私は最初に、周辺事態イコール武力攻撃事態じゃないでしょう、だからそれをできるだけ国民の皆さんの前で説明をしていただいた方がよいのではないかと思って、丁寧に、できるだけ皆さんのことを考えてある意味では聞いてあげた側面もあるのですが、今の御答弁だと、周辺事態六つ、全部可能性は排除できないと。果たしてそうなのかなという感じが私はしますけれども、ということは、ほとんど重なってくる、その可能性はあるというふうに理解をしていいということですね。
〇中谷国務大臣 周辺事態というのは、周辺においてそのような事例が起こっている事態であって、極力我が国の有事に発展しないように、大ごとにならないように努力をしてその状況を回避するわけでありまして、それがもう武力攻撃になるというのは不幸な事態でございまして、極力武力攻撃事態にならないように、周辺事態で対処をしなければならない問題であります。イコール武力攻撃事態になるかどうかという点につきましては、よくその状況推移等を判断して、これはまさしく周辺事態ではなくて我が国の武力攻撃事態で国内防衛の見地から実施するということで、概念的にも違っておりますけれども、周辺事態において極力武力攻撃事態にならないように努めるわけでございます。
〇玄葉委員
ますますわからなくなっちゃうんですよ、逆に。そうなると、武力攻撃事態というのは、もう本当に拡大しちゃうんですよ。つまり、何で聞いているかというと、周辺事態だけの発生ではできないことが、事態が併存することで、つまり武力攻撃事態とあわせて認定されることでできることというのはたくさん出てくるわけですよ。だから、そうじゃないんだということを言ってもらおうとして聞いているのに、全部可能性があるんだ、こういう話ですね。私は、果たしてそうなんだろうかというふうに思いますよ。状況の推移によっては――そんなの当たり前ですよ。状況が推移したらそれはどうなるかわかりませんよ。だけれども、この時点でこういう周辺事態が発生しているときに、今具体的に申し上げたわけですから、武力攻撃事態になるんですか、その可能性はあるんですかと聞いているのです。〇中谷国務大臣 例え話で誤解を招く面もございますが、例えば、周辺事態を近所の火事としますと、それが三軒先か十軒先かわからないんですけれども、風向きによっては我が家に火がうつってくるわけであります。ですから、その風向きの要素もありますし、事態の状況を見て判断しなければなりませんが、武力攻撃事態というのは、まさに我が家の火災に対していかに火を消して住民を安全に守るかという観点でありまして、まさに我が家に火がうつる事態が武力攻撃事態であり、うつりそうな段階が予測される事態でありまして、周辺事態というのは、その近所の火事の状況に対して、いかにその消火に対して支援をするかという事態ではないかと私は考えております。
〇玄葉委員 中谷長官、総理も笑っていますよ。いや、率直に言ってわからない。私、こればかり本当はやりたくないんだけれども、では、この六つの事態はすべて予測される事態になり得る、この時点でなり得る可能性があるんですか。では、イエス、ノーで答えてください。イエスという答えをしていると思うんですけれども、本当にそうですか。
〇中谷国務大臣 まさしく状況を見なければなりませんけれども、完全にあるかどうかというのは全く言えないわけでありまして、ほとんどないと思いますが、完全に排除できるというふうに言い切れる状況でもないわけでございます。
〇玄葉委員 ちょっと答弁、ひどいですね。今の答弁になっていくと、何か率直に言って、周辺事態はイコール武力攻撃事態だというふうに聞こえなくもない。そういう答弁に聞こえなくもないですよ。可能性はほとんどないとはっきり、きちっと言えばいいんだけれども、そういうところがある。これはまた別の機会にやらせていただきたいと思いますが、米軍との関係、関連しますから一言申し上げたいと思いますけれども、御案内のとおり、我が国に武力攻撃事態が発生したらば、特に日米安保の五条で米軍と自衛隊が共同対処行動をとるということになっているわけでございます。これは、米軍に対してどう支援するのか、あるいはその行動の円滑化をどう図るのかということで、先ほどの質疑の中にもありましたけれども、これは支援法、具体的にどういうふうに、どういう法整備を考えておられるのですか、外務大臣。
〇川口国務大臣 お尋ねに対してでございますけれども、米軍に対する支援のあり方といたしましては、武力攻撃事態対処法案に規定をされていますように、日米安保条約に従いまして武力攻撃事態を排除するために必要な行動が円滑かつ効果的に行われるために実施をする物品、施設または役務の提供などが考えられるわけでございますけれども、より具体的には、事態対処法制の中で、この法制を整備する中で検討をすべき問題であると考えております。その場合には、次に申し上げるような考え方に基づいて検討されるべきものだと思っております。まず一に、我が国の支援が日米安全保障条約の目的の枠内で行われるということでございます。二番目に、我が国の支援が我が国の憲法の範囲内において行われるということでございます。三番目に、我が国の支援が国際連合憲章を初めとする国際法に従って行われるということでございます。四番目に、米軍の行動は、我が国に対する武力攻撃を排除し、我が国及び国民の安全を守るためのものでございますので、米軍が自衛隊と同様に円滑な行動を行えるように、また国民への影響が最小限になるように、米軍に対する支援を検討する必要があるということでございまして、いずれにいたしましても、今後、政府全体の問題といたしまして各省庁間で協議の上、米側と協議をしていく予定でございます。
〇玄葉委員 今、支援法の話と、少し行動の円滑化の話も触れておられますけれども、行動の円滑化の話では、よく言われるように、米軍は、一般国際法上は接受国の国内法の規制は受けないということになっています。だけれども、自衛隊は、今回適用除外の法律を審議することになりますけれども、しかし、国内法の規制は何らかの形で受けていくわけです。しかし、米軍は受けないということなんですけれども、この調整はどうするのか。日米地位協定では尊重義務がありますけれども、尊重義務であって、それは尊重するということであって、守らなきゃいけないという話ではありませんので、何らかの取り決めとか法整備がここも必要になってくるんじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
〇川口国務大臣 日米地位協定との関係でお尋ねでございますけれども、先ほど申しましたように、武力攻撃事態における米軍の行動を円滑かつ効果的なものにするための措置のあり方につきましては、今後、この武力攻撃事態対処法案に基づきます事態対処法制の整備の中で検討をしていくということでございます。そのような措置をとるために日米地位協定を改正するということは検討はいたしておりません。
〇玄葉委員
それでは、先ほど周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態について話をしましたけれども、その事態、いわば重複事態というか併存事態において整理されなければならない課題というのがかなりあるのではないかというふうに思うんです。自治体、民間との関係とか、さまざまあると思うんですけれども、例えばこの場合はどうなるんでしょうか。武器弾薬の提供という議論がございます。つまり、周辺事態法では、たしか第三条だったと思いますけれども、我が国は米軍に対して、周辺事態にあっては武器弾薬の提供はできない、しないということになっています。もっと細かいことを言うと、戦闘作戦行動の発進準備中の云々、こういうこともありますけれども、例えばの例で、武器弾薬の例で話をしたいと思いますけれども、武器弾薬の提供はできない。しかし、今後、今外務大臣がおっしゃったように、米軍への支援法とかあるいは有事ACSAのようなものが整備されていくと、当然、そもそも我が国の武力攻撃事態なわけですから、我が国の武力攻撃事態にあっては武器弾薬の提供はしますよね。そこはいいですか、ちょっと確認のため。当然だと思うんですが、どうぞ。〇川口国務大臣 具体的な内容につきましては、これから検討する中で検討をしていくことです。
〇玄葉委員 いや、具体的な内容といっても、これは少なくとも、武力攻撃が我が国に対して発生して自衛権の問題が発生した、こういうときに武器弾薬の提供というのは私はできるんだと思っているんですけれども、米軍に対してですよ、米軍は私たちの国を守ってくれているんですよ、そういう場合、それもこれから検討するんですか。
〇川口国務大臣 国内的な法制ということについては、ございませんので、それを検討していくということでございまして……(玄葉委員「武器弾薬について」と呼ぶ)武器弾薬について、自衛権の行使の範囲内でそれはできると思いますけれども、それをやっていく国内的な法制、それをこれから検討する、そういうことでございます。
〇玄葉委員 例えば、こういう事態のケースを考えたときにどうなんでしょうか。あえてわかりやすくするために、これはわかりやすく議論しないとなかなか国民の理解を得られないので、あえて特定します。朝鮮半島で事態が起きちゃった。それで、それは周辺事態と認定した。同時にそれは我が国の武力攻撃事態にも認定した。そうなったときに、米軍から武器弾薬の提供を求められた。こういう場合米軍は、朝鮮半島で、朝鮮半島でですよ、日本側が提供した武器弾薬というのは、これは使えるんですか、使えないんですか。
〇中谷国務大臣 その場合は、朝鮮半島における周辺事態の支援とまた我が国の武力攻撃事態における米軍の支援と、それは区分をして支援を行うわけでございます。
〇玄葉委員 そうすると、どうですか。五条事態、つまり武力攻撃事態でこの米軍に対する武器弾薬の提供を読むのであれば、その武器弾薬は、米軍は朝鮮半島でも使っていいんだということなんですか、それともそうじゃないんですか。
〇中谷国務大臣 武力攻撃事態における米軍の支援につきましては、あくまでも我が国の自衛権、すなわち自衛権発動の三要件の認定があって、それに伴って行動する米軍に対する支援でございますので、我が国の米軍への支援は我が国の防衛に関するものに限定されるわけでございます。
〇玄葉委員 そうすると、朝鮮半島で米軍はそれを使用してもいいということですね。どうなんですか。もう一回確認したいんです。
〇中谷国務大臣 そういうことは一概に言えないわけでございます。(玄葉委員「一概に言えない。どっちなんだよ、これは。答弁になっていない」と呼ぶ)
我が国の武力攻撃に対する米軍への支援は、あくまでも我が国の武力攻撃に限定されるわけでございますので、ほかの地域の周辺事態には使わないわけでございます。
〇玄葉委員 いや、率直に言って答弁になっていないところがあると思います。これは後で、追って同僚議員にバトンを渡しますけれども、なぜ私がこういうことを聞いているかということなんです。つまりそれは、やはり私たちの国の安保政策というのは、フィクションというか虚構で成り立っているという側面が率直に言ってあるんだと思うんです。例えば今、法律を使い分けるみたいな話ですよ、そこもまだよくわからないんだけれども、仮に使い分けるとしたら、オペレーション上は全くナンセンスですよね。全くナンセンスだ。だから私は、そういうことも含めてきちんと正面から説明した方がいいんじゃないかと。今、私たちの国の国益を考えるとすれば、集団的自衛権の問題もあります、ただ、今それを改正するわけにはいかないし改正するべきじゃない、だけれども、国益上、今使い分けすることがベストなんだ、そういう正面からの説明を聞きたいと思って、そういう意図で一つは質問をしているんです。ただ、これは一つの大きな課題だと思いますから、全く答えられていませんので、後でまた質問をさせていただきたいというふうに思います。
〇中谷国務大臣 使い分けができるかどうかということでございますが、我が国の武力攻撃事態におきましては、共同作戦計画や相互支援計画等をつくりまして、軍事面でのオペレーションにつきましては日米間で調整をして行うということになっております。こういう点で、先ほどの周辺事態との区分けについて区分をしてまいりたいと思いますけれども、もう一度申しますけれども、予測される事態またはおそれのある事態においては我が国は武力の行使を行うことはなくて、このような状況においては米軍の武力の行使と一体化するような支援は憲法上容認されないと考えておりますが、安保条約五条に定めることに従って我が国自身が武力を行使して米国と共同対処することになる武力攻撃が発生した場合におきましては、我が国の対米支援については、いわゆる一体化論から生ずる制約を受けることはないと考えられまして、このような場合におきましては我が国の支援が憲法の範囲内で行われるわけでございます。
〇玄葉委員 いや、先ほどの私の具体的な質問には残念ながら答えてもらっていないんです。ですから、そこは多分何度聞いても同じなんでしょうから、ぜひこれはこれから整理をしていきたいというふうに思っています。あと、周辺事態と武力攻撃事態が併存する事態において、地方自治体の対応、あるいは国以外の者、そういう方々との対応、これも一つの問題になってくるんだ、論点だというふうに思います。つまり、周辺事態においては、地方自治体に対してまさに必要な協力を求めることができる、あるいは国以外の者に対しては依頼をすることができる、このレベルなんですね。だけれども、先ほどほとんど重なるような御答弁でしたけれども、予測される事態だというふうになった時点で、先ほど来から議論が出ているような、総合調整権を総理に与える、あるいは指示権を与える、あるいは代執行権を与えるということになっているわけですけれども、これも事態が重なったときには使い分ける、こういうことなんですか。いかがですか。
〇福田国務大臣 基本的にはそういうことなんですね。
周辺事態と武力攻撃事態、それぞれ別個の法律上の判断に基づくものでございまして、周辺事態安全確保法による協力の求め、そして武力攻撃事態対処法による指示などについても、それぞれの法律に基づいて行われる、こういうことになっております。仮に、これらの事態が併存する場合におきましても、それぞれの法律に定める要件に基づく措置が講ぜられる、こういうことになっております。
〇玄葉委員 関連して、地方自治体との関係を少しお尋ねしたいんですけれども、地方自治体との関係については、五条と七条に、地方公共団体の責務ということが書いてあり、同時に地方公共団体と国との役割分担というのが書いてあるわけです。具体的には何も書いてないと言っても過言ではないというふうに思いますけれども、一体地方自治体は武力攻撃事態があったときには何が求められるでしょうか。いかがでしょう。
〇片山国務大臣 地方公共団体の責務につきましては、今後の個別法制の整備の中で具体的に決めていくことになると思いますけれども、地方団体は一般的には、住民の生命、身体、財産を守るという使命がありますから、想定されるものとしては、例えば避難のための警報の発令、伝達や、被災者の救助や、あるいは施設設備の応急的な復旧や、そういういろいろな措置の場合の中で地方団体は国との関係で一定の役割を果たす、こういうことになると思います。具体的には、個別法制をやる場合に、私は、地方団体の意向を十分体してその法制の中に盛り込みたい、こういうふうに思っております。
〇玄葉委員 いわゆる地方自治体にそういう役割を負っていただくということになるのであれば、当然それなりの権限を例えば知事さんなり市町村長さんなりが持たないとできないという側面もあるのではないかというふうに思いますし、あるいは警察とか消防なんかとの関係も出てくると思うんですけれども、そこはいかがですか。
〇片山国務大臣 御指摘の点を含めまして、内閣官房を中心に関係省庁集まりまして、その点は整理しながら個別法制を整備してまいりたい、こういうふうに思っております。
〇玄葉委員 ですから、米軍との関係なんかもそうなんですけれども、国民の皆さんにとって大事な、いわゆる住民の避難だとか誘導をどうするかとかということが抜け落ちているんですね。これはやはり重大な欠陥だというふうに言わざるを得ない。一緒に出すというのが本来なんじゃないかと思うんですけれども、総理、いかがですか。
〇小泉内閣総理大臣 不備な点があったらば、ぜひ提言していただきたい。よく検討したい。
〇玄葉委員 ですから、なぜ一緒に出さなかったのかということ。それは間に合わなかった、こういうことですか。
〇小泉内閣総理大臣 本来もっと早くやるべきだという意見だったら、これは大変建設的な議論だと思います。私としては、今まで備えが不十分だったんじゃないかという点を考えて、今回この法案の審議をお願いしているわけでありますので、今回、不十分であるともし思われるんだったら、十分な提言も出していただき、私どももよく検討させていただきたいと思います。
〇玄葉委員 ですから、これを出すならば、本来は、俗に言う第三分類、それも一緒に出してほしかったということであります。優先順位の問題としては、先ほど、今回の武力攻撃事態に当たらないテロとか不審船の問題もある。もっと言えばサイバーテロの問題なんて何も対応できていないと言っても過言ではないというふうに思うんですけれども、それはまさに優先順位をどうつけるかという話で、同時並行で進めなきゃいけない話だ。だから本来一緒に出してほしかった、こういうことを実は申し上げているということでございます。もう一つ、先ほど岡田委員の方から質疑がありましたけれども、武力攻撃事態の終わりの認定ですね、これはぜひ国会が関与できるようにしなければならないんだろう。やはり泥沼化を防ぐ手だてというのは法律に内在させておかなきゃいけないというふうに思っています。せめて、これは最低限国会決議があればそれはやめます、こういうことだろうというふうに思いますけれども、それは総理、いかがですか。
〇福田国務大臣 武力攻撃事態が終了しまして、一連の対処措置を継続する必要がなくなったという場合には、政府は対処基本方針を速やかに廃止して国会に報告する、こういうことになっております。その際、政府が対処基本方針についての国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重することは当然でございます。
〇玄葉委員 そうすると、仮に終わりの認定について総理と国会の意思が乖離をして、そのときに国会が決議して、もう引こう、やめよう、少なくとも武力攻撃事態ではないというふうに認定しよう、認定というか終わりを決めようということであれば、それはもう尊重するということですね。
〇福田国務大臣 政府が対処基本方針を廃止し、そして国会に報告する、こういうことになりまして、国会の審議等を通じて示された国会の意思を尊重する、こういうことであります。
〇玄葉委員 いや、もう余りやりませんが、アメリカでも、例えば国家緊急事態法なんかでは、それは連邦議会が決議すればやめるということになっているわけですよね。そこは、やはり我々としては最低限求めなきゃいけない話だというふうに思っています。以上です。