外務委員会で質問に立ちました。(令和元年6月5日 議事録)
○玄葉委員 玄葉光一郎です。きょうは、まず日米の貿易交渉について、国会においてくぎを刺しておかなければならない、そういう局面かなというふうに思いますので、まずこのことを取り上げたいというふうに思います。
何人かの方が取り上げておられましたけれども、どうも日本の選挙後に日本側の大きな譲歩が発表されるのではないかという懸念が現在広がっているというふうに思いますけれども、副大臣、今、何がどこまで日米貿易交渉では話し合われているのでしょうか。
○田中副大臣 お答えいたします。まず、日米の物品貿易協定であります。日米の首脳会談もございました。この中でも、昨年九月の共同声明に発表されたとおり、日米の信頼関係に基づいて、ここにのっとって、双方がウイン・ウインの形での締結を早期に目指していこうということが確認をされた、そういう状況であります。
○玄葉委員 具体的にどんな話合いが行われているのですか。
○田中副大臣 具体的にはということでありますが、これは昨年の共同声明であったとおり、過去の経済連携協定で約束した譲許内容が最大限であるという日本の立場、こうしたものもしっかりと双方で確認がされている、こういう状況にあります。
具体的な内容でありますが、これに関しては、いよいよ来週から実務者協議が行われるということでありまして、具体的な中身についての協議はまさにこれからという状況にあります。
○玄葉委員 今、田中副大臣は、ウイン・ウインになるように交渉する、こういうふうに言っているわけですけれども、安倍首相の言うウイン・ウイン、あるいはあなたの言うウイン・ウイン、これはどういう意味ですか。
○田中副大臣 これは交渉の中で、例えば農産品に関しては、先ほどもお答えさせていただきましたが、過去の経済連携協定で約束した市場アクセスの譲許内容、これが最大限、これをしっかりと守っていきたい。また、工業製品、そういうような形に関しては、しっかりと攻めるべきものは攻める。
こういった意味で、日米ウイン・ウインの形となる、これの早期成果達成に向けて、日米の信頼関係に基づいて、議論を加速させていきたい、こういうことで日米の首脳会談では一致をしたということであります。
○玄葉委員 では、今のは、ウイン・ウインというのは、簡単に言えば、車と農産物の、両方とも関税の問題ということになろうかと思いますけれども、代表的なものは、そういうものについて、TPPをいわばなぞるような形で合意をする。
つまりは、農産物の関税に関しては、TPPが最大限の日本にとっての譲歩内容ですよ、あわせて、車の関税について二・五%の関税をきちっと下げてもらう、あるいはトラックの二五%の関税をきちっと下げてもらう等々のことをパッケージで合意しましょう、こういうことだと考えてよろしいですか。
○田中副大臣 先ほどお答えさせていただいたことでありますが、これは車も含めた工業製品全般ということであります。当然、農産品もある。この中で総合的にパッケージとして締結を目指していくという状況にあります。
具体的な項目については、まさに先ほどもお話しさせていただきましたが、実務者協議、これは来週、月火と初めての実務者協議が行われるということであります。具体的な項目については、この場で申し上げることは、今後の交渉に予断を与えるおそれがあるということで、差し控えさせていただきたいと思います。
○玄葉委員 TPPは、御承知のとおり、簡単に申し上げれば、車と農業のパッケージ合意だというふうに言えると思います。
牛肉の関税が三八・五%から十六年目には九%になる、チーズ製品の関税撤廃、豚肉四・三%の関税が十年目に撤廃、米国産の米が十三年目に七万トン入る。そのかわり、日本からの自動車二・五%関税は二十五年かけて撤廃、トラックへの二五%関税は三十年目に撤廃ということでございます。私は、これ自体、かなり日本が譲っているというふうに思います。
ただ、今心配だなと思うのは、どうも選挙後に、日本側がかち取ろうとしているものが得られないまま、日本の農産物の関税だけが下げられるのではないかというふうに私自身も懸念をしているところでありまして、そのことは絶対ないというふうに約束していただけますか。
○田中副大臣 特に、今、農林漁業者の方々におかれては、いろいろな不安があるということも承知している状況にあります。こうした皆さんに懸念がないようにしっかりと交渉を進めていきたい、そのように考えております。
○玄葉委員 私が聞いたのは、日本側が特に工業製品等で得られるものが得られないまま、農産物の関税だけが一方的に下げられる、そういうことは絶対ないというふうに言っていただけますかと聞きました。
○田中副大臣 いずれにいたしましても、我が国としては、いかなる国とも国益に反するような合意は行うつもりはございません。
○玄葉委員 どうもはっきり答えないということ自体が大変心配になるわけです。
何度も聞いているわけでありますけれども、一方的に譲歩するなどということは絶対にないと私だったら答えますけれども、そう答えられないということは、どうも怪しいなというふうに感じて、更に懸念が広がるのではないかというふうに、私は機会を差し上げているつもりなのですけれども、私だったら一方的に譲歩することはないと答えますよ、私があなたの立場だったら。どうですか。
○田中副大臣 何度も繰り返しますが、今はまだ具体的な項目についてもこの場で申し上げることはできない、今後の交渉にやはり予断を与えるおそれがある。
しかし、農林漁業者に懸念がないようにしっかりとしていきたい。そして、当然のことながら、これは日米の信頼関係に基づいて、日米の共同声明にあるように、ここにのっとって、しっかりと、我が国の国益に反することがないように交渉を進めていきたい、そのように考えております。
○玄葉委員 やはり、ますます怪しくなったなという感じがこの質疑でいたします、残念なんですけれども。
TPP11が発効して、例えば牛肉などは、豪州産は余りふえていないのですけれども、資料を見ましたらば、カナダ産とニュージーランド産は、去年の一月から四月と比べると、一・八倍入ってきているんですね。それだけ関税が下がっている効果が出ているということだと思います。メキシコ産は一・五倍入ってきています。
これは当然、アメリカは焦りますよね。アメリカは焦るというのは、米国の畜産団体は焦ると思います。農業団体は焦ると思います。それはトランプ大統領をつっついているはずです。ですから、大統領選を前にして、トランプ大統領は、自分はTPPを脱退しておきながら、農産物の関税をTPP並みに下げたい、そういう思いがあるわけですよね。そのことは恐らく安倍さんにトランプさんは伝えていると思います。
想像ですけれども、安倍さんは、いやいや、ちょっと待ってくれ、あなたの顔は大統領選の前にはいずれ立てるから、自分にだって選挙がある、それはお互い選挙している身だからわかるだろうということで、では、選挙後にしような、どうもそんな感じじゃないのとみんな心配するわけですよ、やはり。多くの人はそうじゃないかなと思うんですよね。そんなことはないですか。
○田中副大臣 お答えいたします。
今の御質問は、両首脳間で、七月の選挙後、八月の合意が確認されたのではないか、そういう推測ではないかなと思っておりますが、このような私的なる約束を日米の首脳間でしたという事実は全くないものと私は承知をしております。
○玄葉委員 トランプ大統領は、ツイッターで、大きな進展が起きつつある、農業や牛肉は特にそうだ、選挙後の八月によい内容の発表ができる、また会見で、我々はTPP水準に縛られていない、こういうふうに言っているわけです。
でも、両首脳間の表での合意ではない、確かにそうかもしれません。だけれども、少なくとも合意を選挙後に先送りしたことは間違いない。恐らく、大統領選挙の前のある時期には合意しようというふうにお互い確認していることもほぼ間違いないのではないかというふうに思いますので、さっきのような推測、あるいは、ある人に言わせればそれは邪推かもしれませんけれども、そういうものが生まれて、結果として懸念が広がっているということだと思うんですね。それを打ち消すだけの答弁に残念ながらなっていないというふうに私は思うんです。
ですから、一方的に我が国が譲歩することは絶対にないのだ、選挙後にそんな一方的な譲歩が行われることは絶対ないとここで明言してください。
○田中副大臣 この前の日米首脳会談で確認されたということは、やはり日米のウイン・ウインとなる形で早期の成果を達成、これに向けて、日米の信頼関係に基づいて、議論を更に加速をさせていこう、これは一致をしたところであります。
その中で、内容についてでありますが、これは、来週の実務者協議、ここからまさにスタートするということであります。
しかし、申し上げることは、やはりこれは、攻めるべきものはしっかりと攻めて、守るべきものはしっかりと守る。そして、特に農産品についての御懸念があるということでありますが、これは九月の共同声明に基づいて、譲許内容が過去の経済連携協定で約束したもの、これが最大限である、この確認もお互いにされているという状況にあります。
しっかりと交渉を進めて、農林漁業者には懸念がないようにしていきたいと思っています。
○玄葉委員 ウイン・ウインの早期の成果達成というのは、一致したというよりは、これは安倍総理の発言だと私は思いますので、やはりそういう意味で、どうも、必ずしもこの問題について順調に進展しているとは言いがたいのではないかと思います。
もともと安倍さんは、米国抜きのTPPは意味がないと言っていたんですね。その後、トランプ大統領はTPPを脱退して、TPP11を発効していくわけですけれども、TPP11に米国が入ってくるのを待つという戦略だったはずなんですよ。だけれども、今は結局、バイの交渉にある意味追い込まれているわけです。
その交渉の今真っ最中というところなので、私は、やはりこの一連の経過を見ると、非常に押し込まれ感が強いなというふうに思っていますから、ぜひ、選挙後に一方的な譲歩が発表されるなどということが絶対にないように、この国会の外務委員会という場で私から注文をしておきたいというふうに思います。
時間がありませんが、日ロの外相会談、四回、北方領土問題で行われたということでございます。せんだっても行われて、結果についての発表がございました。
一体、領土問題について進展があったのかなかったのか、そして、日本側の立場を河野大臣は明確に、日ロの立場が異なる部分については伝えたというふうに報道されておりますけれども、どう伝えたのか、G20では北方領土問題についての大枠合意というものはあり得るのか、お答えをいただければと思います。
○河野国務大臣 交渉の内容についてはつまびらかにするのはしないというのが両者の合意でございますので差し控えますが、G20で大枠の合意をする、しない、何も決まっているものはございません。
○玄葉委員 これまで、日ロ外相会談で、河野外務大臣は手応えを感じるということを言ってきているのでありますけれども、三回目、四回目の会談があったわけでありますけれども、そのときの手応えはいかがだったのでしょうか。
○河野国務大臣 ラブロフ外務大臣とは、しっかりと両国が受入れ可能な合意をしようということで合意をして交渉をしているわけでございますので、粘り強く両国が受入れ可能な合意をできるように取り組んでまいりたいと思います。
○玄葉委員 なかなか立場が異なる部分について進展しているという印象が、残念ながら、現時点ではないのです。もちろん、交渉の中身はつまびらかにしないということですから、そもそも伝わってきていないのかもしれませんけれども、ただ、G20で大枠を合意をするというのがもともとの目標だったのではないか、これは想像と報道でありますけれども、そういうことではなかったのでしょうか。
○河野国務大臣 そういうことではございません。
○玄葉委員 少なくともそういう報道があったことは間違いないのでありますが、改めて申し上げますと、G20で日ロ首脳会談が行われる、その場で北方領土交渉について何らかの大枠合意がなされるという見通しは立っていないというふうに考えてよろしいですか。
○河野国務大臣 日ロの首脳会談を今調整をしているところでございまして、その議題についてまだ確定しているものはございません。
○玄葉委員 もう時間なので終わりますけれども、改めて確認ですけれども、日ロの外相会談で北方領土問題についてそれぞれの見解を述べ合うときには、基本的に、日ソ共同宣言に基づいて交渉を加速する、その日ソ共同宣言というものをベースに議論されているというふうに認識をしてよろしいですか。
○河野国務大臣 日ロのこれまでのさまざまな経緯に基づき交渉しているわけで、首脳間は五六年の共同宣言に基づいて交渉を加速化させようということでございますから、それに基づいて交渉を加速化すべく努力をしているところでございます。
○玄葉委員 これまでの日本とロシアの間の交わされた諸合意、諸文書全て踏まえて交渉している、最後にもう一回確認ですけれども、それでよろしいですね。
○河野国務大臣 総理は、日ロ間ではこれまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきており、これら全ての諸文書や諸合意に基づいて交渉を行ってきています、その中でも、一九五六年の日ソ共同宣言は、両国の立法府が承認し、両国が批准した唯一の文書であり、現在も効力を有していることから、昨年十一月の日ロ首脳会談では、五六年共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで一致をいたしましたという答弁をされております。
私も総理と同じ考えでございます。
○玄葉委員 わかりました。
終わります。ありがとうございました。