外務委員会で質問に立ちました。(令和元年11月6日 議事録)
○玄葉委員
共同会派の玄葉光一郎です。
きょうは、日米貿易交渉について、特にWTOとの整合性、さらには今後の交渉等について議論をさせていただきたいというふうに思いますが、その前に、多くの人が関心を持っている事項なので、さわりだけ、我が国の海上自衛隊が中東に派遣をされる、その検討を始めたということがございますので、そのことについて冒頭数分使って、防衛副大臣に来ていただいているので、お話をいただきたいというふうに思います。この海上自衛隊の中東派遣の検討、この目的、根拠についてお話しいただけますか。
○山本副大臣 おはようございます。
玄葉委員の御指摘、御質問にお答えをさせていただきます。 まず、この派遣の目的ですが、今般、国家安全保障会議等において安倍総理を含む関係閣僚間で行った議論を踏まえ、我が国として、中東における我が国に関係する船舶の安全確保のための独自の取組を行っていくとの考えのもと、政府方針として、情報収集態勢を強化するために自衛隊アセットの活用に関する具体的な検討を開始いたしました。
政府としては、これまでも関係国と連携しながら情報収集を行ってきたところですが、こうした情報収集の取組を更に強化することを目的として、自衛隊アセットの活用を検討しているところでございます。
今般の政府方針においては、我が国独自の取組として、外交努力や航行安全対策の徹底とあわせて自衛隊アセットの活用の検討も行うこととしており、これらの取組を通じ、中東地域の平和と安定及び我が国に関係する船舶の安全を確保していく考えでございます。
根拠でございますが、自衛隊アセットを活用して実施することを検討する活動は情報収集でありまして、防衛省設置法第四条第一項第十八号に規定する「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として実施することを考えております。
○玄葉委員
そうすると、中東地域における情報収集という目的と、我が国に関係する船舶の安全確保という目的だというふうに理解してよろしいですか。
○山本副大臣
御指摘のとおりです。
○玄葉委員
そうすると、防衛省設置法四条の何項ですか。十八項ですか。十八項ですね。防衛省設置法でこの情報収集の強化を行うということでありますが、我が国関係船舶を守るということは、日本の船を、タンカーなんかを守るということですから、この防衛省設置法で可能なんですか。
○山本副大臣
可能と考えております。
○石川政府参考人
お答え申し上げます。
今副大臣が御答弁いたしました趣旨は、我が国の関係する船舶の安全確保のための情報収集を設置法四条の第一項第十八号に規定する調査及び研究として行うということでございます。
○玄葉委員
ですから、山本副大臣、情報収集は可能だと思います、確かに。ただ、日本の船、タンカーを、ホルムズ海峡に行くかどうかは別として、中東の公海で守るという行為は可能ですか。
○山本副大臣
玄葉委員にお答えをいたします。先ほど、確かに可能と私申し上げましたけれども、それは防衛省設置法の、先ほど申し上げた調査研究に対する設置法の第一項十八号のところで申し上げましたけれども、それをもって直ちに日本の船舶を防護するということではなく、防護する、そういう状況にあるかどうかということを調査研究してまいるという意味合いでございます。
○玄葉委員
日本の船を守らなきゃいけない、あるいは海上輸送の安全を守る重要性というのは私も理解を十分しているところでありますけれども、とても日本のタンカーを防衛省設置法だけで守れるとは思えない。情報収集は可能かもしれませんけれども。
本当に、例えば、日本のタンカーは、ちなみに六月に二隻攻撃を受けたわけでありますけれども、そういった事態で守れるとはとても思えないわけですが、防衛省の幹部はこのことについて、どこかの段階で状況次第で海上警備行動をとるということも検討したいということでありますが、それでよろしいですか。
○山本副大臣
中東情勢に関しましては、現時点において直ちに自衛隊アセットにより我が国に関係する船舶の防護が必要とされる状況にはないと考えております。また、仮に自衛隊アセットを派遣したとしても、自衛隊に対する攻撃が想定されるような状況でもないと考えております。その上で、今般の検討において、情報収集態勢強化のための自衛隊アセット活用として想定している活動は、あくまでも情報収集でございます。
いずれにしましても、今般の検討に当たって、隊員の安全確保についてもしっかりと考えてまいりたいと思いますし、御指摘の点も含めて検討を進めてまいりたいと思います。
○玄葉委員
御指摘の点も含めてというのは、海上警備行動も含めて検討していく、こういうことでよろしいですね。
○山本副大臣
お答えをいたします。海上警備行動の発令ということは、先ほども申し上げたとおり、現時点において直ちにという状況にはないと考えております。しかし、どういう情勢になるのか、しっかりとこの情報収集態勢を強化してまいりますので、玄葉委員の御下問、御指摘も含めてさまざま検討してまいりたいと思います。
○玄葉委員
そこは、山本副大臣、別に副大臣が初めてじゃないので、いろいろな方がもうはっきり海上警備行動について検討すると言っていますので、はっきり言ってください、海上警備行動の検討も、その時と場合によってはというか、状況が変化した場合にはしていかなきゃいけないと。それは、だって、今から検討していかなきゃいけないわけですから、検討していきますとはっきり言ってください。
○山本副大臣
お答えを申し上げます。若干繰り返しになるかもしれませんが、現時点において直ちに自衛隊アセットによる我が国に関係する船舶の防護を実施する状況にはないと考えておりますが、こうした状況が変化する場合には、我が国に関係する船舶の安全を確保するために必要な措置について検討することとしておりますので、この措置をとる場合には海上警備行動の発令が考えられます。
○玄葉委員
武器の使用の問題がございます。それぞれ、これは隊員の安全を考えると大事な話なわけでありますけれども、防衛省設置法四条十八項で、調査研究で行える武器の使用、海上警備行動で行える武器の使用、海賊対処法で行える武器の使用、それぞれわかりやすく、その違いも含めて教えていただけますか。政府委員を呼んでいますから、副大臣じゃなくても結構です。
○石川政府参考人
お答え申し上げます。いずれにしましても、今後具体的に検討していくこととしておりますけれども、一般論として申し上げますと、調査研究で派遣する場合には、自衛隊法九十五条の武器等防護の適用の可能性がございます。
それから、海警行動の場合には、これは、自衛隊法九十三条第一項に基づきまして、警察官職務執行法第七条の規定が準用されまして、武器の使用が可能となります。具体的には、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当の理由のある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において武器を使用することができます。ただし、正当防衛、緊急避難の場合等を除いては、人に危害を与えてはならないということとされております。
それから、最後に、海賊対処法におきましては、今申し上げました警職法七条による武器使用に加えて、海賊対処法第六条に基づき、他の船舶への著しい接近等の海賊行為を制止して停船させるため、他に手段がない場合においても武器を使用することができるというふうにされておりまして、この武器使用によって人に危害を与えたとしても許容されるということが要件でございます。
○玄葉委員
ありがとうございました。
私、心配しているのは、海上警備行動をとるような事態になったときに、警職法倣いということで今お話がありましたけれども、他方で、恐らく駆けつけ警護、PKOの駆けつけ警護みたいなことが起きかねないなというふうに思っていて、つまりは、ほぼ同じ地域に存在する外国船舶がやられたときに、恐らく海上警備行動の武器使用では対応できないということになるのではないかと思いますけれども、いかがですか。
○石川政府参考人 お答え申し上げます。
いずれにしましても、現時点で我が国に関係する船舶の防護を要する状況にはないというふうに考えております。今後情勢が変化した場合にどういう形の措置をとるのか、あるいは、そうした措置をとった場合にどういう場面が想定され、どういう武器使用が必要になるのかにつきまして、今後検討してまいる所存でございます。
○玄葉委員
きょうは日米貿易交渉についてやりたいので、余り突っ込みませんが、一般論でいいので、海上警備行動で行動していて、近くの外国船舶をその警職法倣いの武器の使用で守れますか。
○石川政府参考人
お答え申し上げます。あくまで、今後の検討課題でございますので、一般論として申し上げますと、自衛隊法八十二条に規定する海上警備行動は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合に、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊が海上において必要な行動をとることができるものでございます。
海上警備行動の保護対象となる海上における人命若しくは財産は、基本的には日本国民の生命又は財産と解されておりまして、二〇〇九年に海賊対処を目的として海上警備行動命令を下令したことがございましたけれども、その際の解釈としては、保護対象となる船舶は、日本籍船、それから日本人が乗船する外国籍船、それから我が国の船舶運航事業者が運航する外国籍船又は我が国の積み荷を輸送する外国籍船であって、我が国国民の安定的な経済活動にとって重要な船舶という解釈をした、これが過去の実例ということでございます。
今後とも、そうしたことも踏まえながら、具体的に検討してまいりたいと思います。
○玄葉委員
おっしゃるとおりだと思います。結局、海警では、海警行動で近くにいる外国船舶は守れないということです。だから、その限界もはっきりさせた上で、私は、本来は目的をはっきりさせた上で新しく法律をつくる、恒久法か特別法かは別として、つくる方が本来かなというふうに実は思っているんです。防衛副大臣、いかがですか。
○山本副大臣
玄葉委員のお考えとして拝聴をさせていただきました。
○玄葉委員
外務大臣、いかがですか。
○茂木国務大臣
委員の御指摘、一つの考え方であると思っております。いずれにしても、今の中東情勢は非常に緊張の度合いを高めておりまして、そういった中で、日本に関連する船舶の安全な航行、これは必要なことでありまして、まずは外交努力を行うということは重要だと思っております。
さらには、船舶の運航会社であったりとか、さまざまな形で航行の安全のための政府との連携もとっていかなければならない、同時に、今後、そういった航行の安全が図れるかどうかといったことについて、まずはきちんと情報収集態勢をとっていく、そのことを基本にしながら今後のことについても検討してまいりたいと考えております。
○玄葉委員
なかなか政府としても難しい判断だというのはよく理解をいたします。ただ、本来なら、新法、特別法というか、そちらに踏み込むような話なのかなというのが私の現時点での考え方だということは申し上げておきたいと思います。
その上で、日米貿易交渉でありますけれども、本会議で私も質問させていただきまして、問題意識は申し上げたつもりであります。いろいろな角度からこの問題は議論できるのでありますけれども、一番自分が、本会議でも申し上げたんですけれども、残念だったなと思うのは、WTOとの整合性の問題なんですね。
つまりは、WTO違反かどうかというのは少し検証が必要だと思うんですけれども、WTO違反かどうかはおいておいたとしても、少なくともそういう疑問の目が向けられているということ自体が、これはGDP一位の米国とGDP三位の日本による日米貿易交渉ですから、そのこと自体が世界全体の自由貿易に与える影響を自分は危惧しているわけであります。
ですから、このことを今後のためにも、私はある意味このことを整理することは政府の、特に日本政府の第二段階の交渉の後押しにもなると思っていますので、きちっと整理をさせてもらいたいなと思っています。
防衛副大臣、いいですよ、もう。
○松本委員長
防衛副大臣、どうぞ。防衛省は。
○玄葉委員
防衛省は結構です。
それで、まず、これは外務大臣、当然といえば当然なんですけれども、この日米貿易交渉は、WTO上のいわゆる最恵国待遇、つまり、全ての加盟国に同じルールを適用するという最恵国待遇の例外として扱われる貿易協定という位置づけですか。このぐらいは外務大臣に聞きましょうか。
○茂木国務大臣
それで結構です。
○玄葉委員
それで、これはちなみに、山上さんが今手を挙げられましたけれども、平成三十年、去年の十一月十四日の段階で、当然、日米貿易交渉はWTO上の例外、要は、いわゆる最恵国待遇の例外ということで交渉しているんですよねというふうに申し上げたところ、政府参考人からは、できるものがガット二十四条八項に言う自由貿易地域に当たるかどうかということは、予断することはできない、日米間で合意する内容、これを最恵国待遇を適用する、他の国にも均てんするということであれば、この問題にはならないと。私は大変びっくりしたのでありますけれども、そんな部分的なことをやっているんじゃないだろう、当然ながら、最恵国待遇の例外として認められる協定を結んでいくんだろうということだと思っていたわけでありますけれども、山上さん、これはいいですね、こういうことで。
○山上政府参考人
お答え申し上げます。ただいま委員御指摘の答弁は、当時、日米間で交渉中であったものですから、まだ結論がはっきりしない段階でいろいろなシナリオがあり得るということを申し上げた次第でございます。今回まとまりました日米貿易協定につきましては、先ほど茂木大臣から御答弁がございましたように、ガット二十四条八項に言う自由貿易地域ということで、最恵国待遇の例外ということで、WTO協定、ガットとの整合性が確保されているということでございます。
○玄葉委員
これは政府委員で結構でありますけれども、ガット二十四条、私も今、手元にございますが、この自由貿易地域、FTA、つまり最恵国待遇の例外であるために求めているものは何だということなんでしょう。
○山上政府参考人
お答えいたします。ガット二十四条八項(b)項がございます。委員御指摘の自由貿易地域とは、「関税その他の制限的通商規則がその構成地域の原産の産品の構成地域間における実質上のすべての貿易について廃止されている二以上の関税地域の集団をいう。」こういう規定がございます。
そこで問題となるのは、実質上の全ての貿易ということは何ぞやということでございます。この点については、確立された具体的な基準というものはございません。ただ、我が国といたしましては、貿易額のおおむね九割の関税撤廃を一つの目安として対応してきたということでございます。
○玄葉委員
おっしゃるように、ガット二十四条が求めているのは、実質上全て、サブスタンシャリーオールの貿易について関税を撤廃する、域外貿易はより制限的にならない、五項の(b)も含めてだと思いますけれども、そういうことを求めているわけであります。それで、おっしゃるように、実質上全てのの基準は明確でないけれども、大体九割を求めてきたというのが日本政府の立場だというふうに思います。
それで、これも技術的なことなのでありますけれども、これは率直に、あれですよね、タリフラインではかるのか、貿易額ではかるのかもきっと明確じゃないのかもしれませんけれども、多分澁谷さんはわかると思うんですが、貿易額ではかった場合とタリフラインではかった場合、車関税を除いた部分で計算すると、それぞれどのくらいの自由化率になるでしょうか。
○澁谷政府参考人
岡本先生の御質問にもお答えしたところでございますが、自動車及び自動車部品、関税撤廃を前提としておりますので、それを除いた場合の試算というのは合意内容に反する、また今後の交渉にも悪影響を与えるおそれがあるということから、試算をすることは差し控えたいと思いますが、自動車・自動車部品を含めた貿易額ベースでの関税撤廃率は、アメリカ側が九二%、日本側が八四%ということでございます。
○玄葉委員
それはちょっと余りにも不誠実で、これは議論にならないですね。岡本委員からもお話がありましたけれども、影響試算もそうだし、こういった自由化率を出す、こんな極めて単純なものまで答えられないというのでは、本当に質問できない。ちょっと、よく政府で協議してください。(発言する者あり)
○松本委員長
政府に対する質問ですか。(玄葉委員「いやいや、政府に協議してほしい」と呼ぶ)
○澁谷政府参考人
先ほどお答えしたとおりでございます。(発言する者あり)
○松本委員長
委員、政府に対する御質問ということでよろしいんでしょうか。(玄葉委員「そうです。答えてほしい」と呼ぶ)
○茂木国務大臣
玄葉委員が、あらゆる経済協定を日本が今後結んでいく上でWTOとの関係について非常に重要である、この御指摘については全く一緒であります。自由貿易の旗手として、これまで、TPP11、日・EU・EPA、そして日米貿易協定と進めてまいりましたが、それはきちんとしたルールを国際的に共有していく、こういったことが自由貿易体制を守る意味からも重要だ、こういう観点から行ってまいりました。
そして、今回日米貿易協定を進めるに当たりましても、当然、例えば農産物について日本の立場等々を守りつつ、WTO協定に整合的なものをつくろうといった形で工業品等々の交渉も行いまして、その結果として、自動車・自動車部品につきましては、先ほど来るる説明しておりますが、協定本文の五条の1で、まず市場アクセスの改善を行う、そしてそのやり方については附属書において規定をする、そして、米国の附属書におきましては関税撤廃について更に交渉する、こういった形で関税撤廃を前提とした今後の交渉が行われる。
当然、この期間については、ある程度の期間ということが、TPP12を考えても、自動車の場合二十五年、トラックの場合三十年、長いステージングでありましたから、これをいかに縮めるか、こういう交渉は今後しっかりしていかなきゃなりませんが、この関税を撤廃するといった意味においては、きちんとWTOとの整合性、こういったものも考えて交渉は進めさせていただきました。
○玄葉委員
これは日本側からしても大変な切り札だと思うんですよね、整合性をとれとアメリカに対して突きつけること自体は。ただ、残念ながら、そういう意味で、時期を明示、車関税についてできなかったということも言えるわけでありますけれども、このタリフラインと貿易額ではかった車関税を除いた自由化率については、やはり出すことが最終的に採決に応じていく、私は前提、当然だと思うんですけれどもね、このくらいは。
これ、理事会できちっと協議していただけますか、委員長。
○松本委員長
御提起をいただいて、しっかりと協議をさせていただき、理事会で協議をさせていただきます。
○玄葉委員
これは外務大臣ももう非常にタフな交渉をずっとこの間されてきて、別に恥じるものがないなら、それはそれで別に出したらいいんですよ、客観的な数字なので。自分は必ず時期を次とりますと言えばいいんでね。それはそれできちっと、さっき岡本さんも言われていたけれども、出すのは出して、影響試算もそうなんですけれども、わかりやすく議論していかないと、むしろ誤解を与えると思いますよ、大臣。
○茂木国務大臣
出せるさまざまな資料であったりとか分析結果、お出しをしたい、そのように思っておりますが、あくまで出すことが適切なものというのは、合意した内容に沿った分析であったりとか試算である必要がある。合意した内容と異なる仮定を置いて、仮に合意したことと違っていたらどんな数字になりますか、こういった数字を出すことは、かえって私は誤解を招くことになるのではないかなと思っております。
先ほどの農業の問題につきましても、これまでの議論を振り返ってもらいますと、農業については、過去の経済連携協定の範囲内、TPPを超えないという形で交渉を進めてまいりました。
それで、TPP11とそして今回の日米貿易協定、これを加えてTPP12を超えないのか、こういった議論は相当あったわけでありまして、それに沿って、農水省としては、この今回の交渉結果とそしてまたTPP11を合わせたものはTPP12の影響は超えていないという分析結果、これも出されておりまして、あらゆることについて、では、日本の経済連携といいますかFTA、日本とシンガポールから始まりましてさまざまなものがありまして、全部のケースについて想定をして試算を出せ、これはなかなか難しいのではないかなと。ただ、理事会におきまして合意されたことについては、できる限りしっかり対応したいと思っております。
○玄葉委員
そういうことは聞いていないので、とにかく極めてシンプルなんです。車関税については、明確な確約はないわけですから、約束はないわけですから、時期も明示されていないんですから、そういう前提なんです。関税撤廃というのは日本政府の思いであって、あるいは日本政府の解釈であって、確実に時期は明示されていないわけですから、それを前提とした数字も出すことは、私は全ての議論の、あるいは採決の前提になるというふうに思います。そのことを改めて申し上げて、きちっと理事会で議論して、出してもらいたいというふうに思います。
あわせて、これも技術的なので政府委員で結構なんですが、ガット二十四条柱書きには中間協定という規定があるんですね。中間協定、インテリムアグリーメントという規定があるのですけれども、この中間協定だったら、私が今申し上げたような自由化率九割とか、そういった必要はないということになっているわけでありますけれども、この日米貿易交渉というのは、このガット二十四条の柱書きに言う中間協定という位置づけを日本政府としてはしているのかどうか、お尋ねをしたいと思います。
○山上政府参考人
お答えいたします。今委員御指摘のガット二十四条五項の中間協定でございます。これは、自由貿易地域を設定する際の過渡的な形態を指すものと解されております。他方で、その定義は明確に定まっておりませんで、WTO加盟国の間でも、確立した解釈が必ずしも存在しているわけではございません。
そこで、日米はどうかと申しますと、この協定のもとでの関税撤廃率は、日米で、それぞれ貿易額ベースで約八四%それから九二%ということでございますので、本協定はWTO協定と整合的であると考えております。
○玄葉委員
要は中間協定かどうか、そういう位置づけなのかどうか、聞いています。
○山上政府参考人
今お答え申し上げましたとおり、現在の形においてWTO協定と整合的であるということでございまして、中間協定という概念を引用することなく整合性は確保されていると考えております。
○玄葉委員
そういう整理だということですね。ただ、茂木大臣、私、やはり改めて思うんですけれども、これは冒頭申し上げたように、違反かどうかというのは、確かに明確に言えるかどうかというのはあるんです。明確に違反だと言う有識者とか学者も中にはいらっしゃいます。現実には、恐らく、加盟国が提訴するとかそういうことはほとんど可能性としては低いと思うんですけれども、ただ、WTOで自由化をある意味主導してきた日本が、少なくとも、こういう国会の中でも一つの大事な論点になるような形でWTO整合性について疑問の目が向けられているということ自体が私は大変残念だし、そうならないように米国を押し切って、本来、協定を結ぶべきだったというのが私の考えなんですけれども、大臣はいかがお考えですか。
○茂木国務大臣
玄葉委員がおっしゃるWTOとの整合性であったりとか、きちんとした国際的な貿易のルールをつくっていく重要性、これをまさに日本が訴えかける必要があるのではないかな、全く賛同するところであります。
その上で、今回の日米貿易協定、見てみたときに、海外からどう映っているか。今、例えば、アメリカがこれまで結んできた新しいNAFTA、USMCA、これには厳しい原産地規則がかかったり数量規制がかかるということでありまして、市場歪曲的な措置もある。これは新KORUSについても同じようなことが言われております。一方、アメリカ、中国との間で、今、残念ながらまだ通商交渉がまとまらない。EUとの間もまとまっていない。
そういった中において、日米間で、世界のGDPの第一位と第三位の日米間でこういった貿易協定について合意がなされた、このことについては、私は、各国から大きく評価をされている。私もさまざまな国の関係大臣等ともお会いしておりますけれども、問題指摘というよりも、日本としてアメリカとの間でこれだけの貿易協定をよくまとめた、こういう評価をいただいているところであります。
もちろん、委員の御指摘、こういったものも踏まえながら、今後のさまざまな交渉には臨んでまいりたいと考えております。
○玄葉委員
疑問の目がWTO整合性について向けられているということ自体は遺憾だというぐらいは言ってください。
○茂木国務大臣
WTO整合性との関係で疑問の目が向けられないように努力をしてまいりたいと考えております。
○玄葉委員
時間がないんですけれども、今後の交渉、これは私は、当然ながら車関税の撤廃時期を明示させるということが最優先の交渉になるというふうに思いますけれども、そういうお考えでよろしいですか。
○茂木国務大臣
関税の部分についてはそうなってまいります。ただ、御案内のとおり、九月二十五日の日米共同声明のパラグラフ三、それにはさまざまな分野が明記をされておりまして、どの分野を交渉するかということは、まず最初の協議、この協定が発効した後の協議の中で決められていくということでありまして、いずれにしても、次の段階の交渉が日米双方にとってウイン・ウインになるように日米協議の中で決めていきたいと思っておりますが、関税についてはおっしゃるとおりです。
○玄葉委員
これは、私、農産物関税をアメリカ・トランプ大統領の関心に従って今回引き下げたということで、何をレバレッジにして車関税の時期を明示していくのかということを実は大変心配していますけれども、いかがですか。
○茂木国務大臣
御心配ありがとうございます。交渉、さまざまな進め方がありますが、基本的には、いかに自分の側の情報というのを多く出さずに相手側の情報をたくさん獲得するか、これが交渉における優位に立つ、この秘訣であると考えておりまして、今後の交渉にかかわる問題でありますから、これ以上のコメントは控えさせていただきたいと思います。
○玄葉委員
もう最後に、共同声明文書に「米国の自動車産業の製造及び雇用の増加」とありますけれども、これは追加関税のカードをアメリカは完全に手放したわけではないというふうに私自身は解釈しているんですけれども、そういったことを盾に、少なくとも直接投資を強く求めてくるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょう。
○茂木国務大臣
今引用されましたのは、ことしの共同声明ではなくて、昨年の共同声明に入っている部分でありまして、「インクリースプロダクション アンド ジョブズ」、そこの部分をおっしゃったんだ、そのように思っておりますけれども、これはアメリカの意向としてはこういう考えを持っている。さまざまな形で、貿易等が促進することによりまして、アメリカの自動車産業にかかわる生産であったりとか雇用がふえる、こういったことは起こってくるんだろうと思っております。
○玄葉委員
終わりますけれども、私は、今回の日米貿易交渉はやはりトランプさんの方に取り分が多いなというふうに思いますし、何より、冒頭申し上げたように、WTOとの整合性で疑義を生じているということが大変残念だということを改めて申し上げ、最後に、これはぜひデータを出しましょう、簡単な、改めて、誰もがわかる。全部出せと言っているわけじゃないので、普通に、多くの人がこれは出してよというものは、客観的な議論のためにぜひ出してほしい、そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。